学研全訳古語辞典 |
が
《接続》体言および活用語の連体形に付く。
①
〔連体格=連体修飾語をつくる〕
(ア)
〔所有〕…の。
出典古今集 雑下
「わが庵(いほ)は都の辰巳(たつみ)しかぞ住む」
[訳] ⇒わがいほは…。
(イ)
〔所属〕…の。
出典徒然草 一一
「大きなる柑子(かうじ)の木の、枝もたわわになりたるがまはりを」
[訳] 大きなこうじみかんの木で、枝もたわみしなうほどに実がなっている木のまわりを。
(ウ)
〔類似〕…のような。
出典奥の細道 象潟
「象潟(きさかた)や雨に西施(せいし)がねぶの花」
[訳] ⇒きさかたや…。
(エ)
〔親愛・軽侮〕…の。▽人名・人称代名詞などに付いて。
出典万葉集 三八四一
「仏造る真朱(まそほ)足らずは水たまる池田の朝臣(あそ)が鼻の上を掘れ」
[訳] 仏を造る赤い土が足りないなら、水がたまる池田の朝臣の鼻の上を掘れ。
②
〔主格〕…が。
出典源氏物語 若紫
「雀(すずめ)の子を犬君(いぬき)が逃がしつる」
[訳] すずめの子を犬君(=召使いの童女の名)が逃がしてしまったの。
③
〔同格〕…で。…であって。…でまた。▽「が」の上は、活用語の連体形。
出典源氏物語 桐壺
「いとやむごとなききはにはあらぬが、すぐれて時めき給(たま)ふありけり」
[訳] それほど高貴な身分ではない方で、際だって帝(みかど)のご寵愛(ちようあい)を受けて栄えていらっしゃる方があった。
④
〔体言・連体形の下に付き「ごとし」「まにまに」「からに」などに続ける〕
出典土佐日記 一・一一
「飛ぶがごとくに都へもがな」
[訳] (鳥が空を)飛ぶように都へ帰れたらばなあ。
⑤
〔希望・好悪・能力などの対象〕…が。
出典浮世風呂 滑稽
「俳諧(はいかい)が好きでこまります」
[訳] 俳諧が好きで困ります。
⑥
〔体言に準ずる意味に用いる〕…のもの。
出典古今集 恋三・詞書
「この歌は…柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)がなり」
[訳] この歌は…柿本人麻呂の作である。
語法
(1)主語を示す用法 「主格」の「が」を受ける述語は、中古までは連体形で、中世以降は終止形となる。(2)「…が…さ」の用法 「が」+形容詞語幹+接尾語「さ」の形の場合、文全体で詠嘆を表す。「…が…であるよ」などと訳すとよい。「わが宿に小松のあるを見るが悲しさ」(『土佐日記』)〈私の家に小松が(新しく)生えているのを見ることのなんと悲しいことよ。〉
参考
(1)「が」と「の」の違い(2)⑥の「の」を準体助詞とする説がある。
が
《接続》活用語の連体形に付く。
①
〔単純接続〕…が。
出典平家物語 九・木曾最期
「粟津(あはづ)の松原へ駆け給(たま)ふが、正月二十一日、入相(いりあひ)ばかりのことなるに、薄氷は張ったりけり」
[訳] (木曾(きそ)殿は)粟津の松原へ馬を走らせなさるが、(時は)一月二十一日、夕暮れ時のころであったうえ、薄氷が張っていた。
②
〔逆接の確定条件〕…けれど。…のに。
出典平家物語 一・祇王
「昔よりおほくの白拍子(しらびやうし)ありしが、かかる舞はいまだ見ず」
[訳] 昔から多くの白拍子がいたけれど、こんな(すばらしい)舞はまだ見たことがない。
が
《接続》文末に付く。
①
〔感動〕…なあ。
出典浮世風呂 滑稽
「あれでもすまねへもんだが」
[訳] あれでもすまないものだなあ。
②
〔考えを述べ、相手の返事を促す〕…が、どうか。
出典浮世風呂 滑稽
「おめえも熱からうが」
[訳] おまえも熱いだろうが、どうか。
③
〔相手をののしる〕…ぞ。
出典浮世風呂 滑稽
「まだやかましいが」
[訳] まだやかましいぞ。◆近世語。
が 【賀】
①
祝い。
②
長寿の祝い。賀の祝い。
参考
②は、四十歳から十年ごとに「四十の賀」「五十の賀」などと祝った習慣で、平安貴族の間で盛んに行われた。室町時代以後は、「還暦」「古稀(こき)」「喜寿」「米寿」「白寿」などを祝った。
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