学研全訳古語辞典 |
ちが・ふ 【違ふ・交ふ】
活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}
①
行きかう。交錯する。
出典枕草子 春はあけぼの
「闇(やみ)もなほ蛍の多く飛びちがひたる」
[訳] 月の出ていない夜もやはり、蛍がたくさん飛び行きかっている(のがおもしろい)。
②
行き違いになる。遭(あ)わないようにする。
出典平家物語 八・室山
「木曾(きそ)にちがはんと、…播磨(はりま)の国へ下る」
[訳] (行家は)木曾義仲(よしなか)に遭わないようにしようと、…播磨の国(兵庫県)へ下る。
③
外れる。それる。
④
相違する。食い違う。背く。
出典曾我物語 四
「母や師匠の御心にちがはん事、いかがすべきなれども」
[訳] 母や師の御心に背くことはどうすればよいかと思うが。
活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}
①
交差させる。
出典徒然草 二〇八
「紐(ひも)を結(ゆ)ふに、上下(かみしも)よりたすきにちがへて」
[訳] 紐を結ぶのに、上下からたすき掛けに交差させて。
②
悪夢を吉夢に変える。夢違(たが)えをする。
出典蜻蛉日記 上
「しばしば夢のさとしありければ、ちがふるわざもがなとて」
[訳] しばしば夢のおつげがあったので、夢違えをする方法があったらなあと思って。
③
相違させる。変える。
出典平家物語 三・法印問答
「理運左右(さう)に及ばぬことを、ひきちがへさせ給(たま)ふは」
[訳] 道理にかなって異議がないことを変えなさるのは。
④
間違える。
参考
類義の語に「たがふ」がある。「たがふ」が、自分や相手の予想・意向と食い違う意であるのに対して、「ちがふ」は、具体的な動作が互いに交差したり行き違ったりする意が本義。なお、「ちがふ」は、古くは「…ちがふ」の形の複合動詞として用いられることが多い。
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