学研全訳古語辞典 |
よするなみ…
分類和歌
「寄する波うちも寄せなむわが恋ふる人忘れ貝おりて拾はむ」
出典土佐日記 二・四
[訳] 浜辺に寄せる波よ、しきりに打ち寄せてほしい。私が恋しく思っている子を忘れるという忘れ貝を。私はそれを舟から下りて拾い、あの子を忘れよう。
鑑賞
風雨で停泊中の浜辺に美しい貝や石を見つけ、任地の土佐(高知県)で亡くした幼い娘のことを思い出した。「忘れてしまおう」ということで、追慕の情のせつなさが一層際だっている。「忘れ貝」は、それを拾うと恋のつらさを忘れることができるという貝のことで、二枚貝の一片を指す。「寄せなむ」の「なむ」は未然形に付いて他に対する願望を表す終助詞で、「~してほしい」と訳す。
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