学研全訳古語辞典 |
ひと 【人】
①
人間。人間一般。
出典徒然草 一
「ひとは、かたち、ありさまのすぐれたらんこそ、あらまほしかるべけれ」
[訳] 人間は、容貌や風采がすぐれていることこそ、望ましいだろう。
②
世間の人。
出典徒然草 五九
「おほやう、ひとを見るに、少し心ある際(きは)は」
[訳] だいたい、世間の人を見ると、少々ものの道理をわきまえている程度の(人)は。
③
ほかの人。他人。
出典更級日記 大納言殿の姫君
「あなかま、ひとに聞かすな」
[訳] しっ、静かに。ほかの人に知らせるな。
④
一人前の人。大人。成人。
出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち
「三月(みつき)ばかりなる程に、よき程なるひとになりぬれば」
[訳] 三か月ぐらいたつころに、ちょうどよい大きさの大人になったので。
⑤
立派な人。相当な人。
出典宇治拾遺 六・四
「今は昔、ひとのもとに宮仕へしてある生侍(なまさぶらひ)ありけり」
[訳] 今は昔のこと、立派な人のもとに奉公している若侍がいた。
⑥
夫。妻。恋人。あの人。親友。▽特定の人の意味。
出典古今集 恋二
「思ひつつ寝(ぬ)ればやひとの見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを」
[訳] ⇒おもひつつ…。
⑦
人柄。性質。
出典徒然草 二三一
「別当入道、さるひとにて」
[訳] 別当入道は、相当な(機転のきく)人柄で。
⑧
身分。家柄。
出典源氏物語 夕顔
「されど、ひとも賤(いや)しからぬ筋に」
[訳] けれども、(伊予(いよ)の介(すけ)は)身分もいやしくない血筋で。
あなた。▽対称の人称代名詞。多くは夫婦間で用いる。
出典蜻蛉日記 中
「ひとの気色(けしき)ばみ、くせぐせしきをなむ、あやしと思ふ」
[訳] あなたがむっとした顔をして、すねているのを、変なことだと思う。
注意
特定の人を表す⑥や人の属性を表す⑦⑧などの意味に気をつけること。
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