学研全訳古語辞典 |
あはれ・なり
活用{なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ}
①
しみじみとした思いだ。趣深く感じる。
出典枕草子 九月ばかり、夜一夜
「蜘蛛(くも)の巣のこぼれ残りたるに、雨のかかりたるが、白き玉を貫きたるやうなるこそ、いみじうあはれにをかしけれ」
[訳] 蜘蛛の巣が壊れずに残っているところに、雨が降りかかったのが、白い玉を(糸で)貫いたようであるのは、なんともしみじみとした思いで興味深い。
②
しみじみと心打たれる。すばらしい。
出典徒然草 一一
「かくてもあられけるよとあはれに見るほどに」
[訳] このような(寂しい)ありさまでも住んでいられたのだなあとしみじみと心打たれて見ているうちに。
③
どうしようもなく悲しい。身につまされて悲しい。
出典源氏物語 若紫
「いとはかなうものし給(たま)ふこそ、あはれにうしろめたけれ」
[訳] とても幼くていらっしゃるのが、どうしようもなく悲しく気がかりだ。
④
もの寂しく、心引かれる。
出典徒然草 一九
「あやしき家に夕顔の白く見えて、蚊遣(かや)り火ふすぶるもあはれなり」
[訳] 粗末な家(の塀)に夕顔の花が白く見えて、そして蚊遣り火がくすぶっているのももの寂しく心引かれる。
⑤
かわいそうだ。気の毒だ。
出典枕草子 正月一日は
「得たるはいとよし、得ずなりぬるこそいとあはれなれ」
[訳] (思いどおり官職を)得たのは大変よいが、(官職を)得ないでしまったのは、ひどく気の毒である。
⑥
しみじみとかわいい。いとしい。
出典更級日記 大納言殿の姫君
「例の猫にはあらず、聞き知り顔にあはれなり」
[訳] 普通の猫のようではなく、(人の言うことを)聞き分けるようでしみじみとかわいい。
⑦
尊く、ありがたい。▽神仏を崇(あが)める気持ち。
出典源氏物語 若紫
「寺のさまもいとあはれなり」
[訳] 寺のありさまもたいそう尊く、ありがたい。
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