学研全訳古語辞典 |
も・む 【揉む】
活用{ま/み/む/む/め/め}
①
(手を)強く擦り合わせる。また、そのようにして物を柔らかくする。もむ。手を擦り合わせて激しく祈禱(きとう)することにもいう。
出典平家物語 八・名虎
「黒煙(くろけぶり)を立てて、ひともみもまれたりければ」
[訳] (護摩をたいて)黒煙を立てて、一もみ手を擦り合わせなさったので。
②
(大勢の者が)入り乱れて押し合いへし合いする。
出典平家物語 七・俱梨迦羅落
「もみにもうで火出(い)づる程にぞ攻めたりける」
[訳] 大勢が入り乱れ押し合いへし合いして火の出るほど激しく攻めたてたのだった。◇「もう」はウ音便。
③
馬を、鞭(むち)でせめて走らせる。
出典平家物語 九・一二之懸
「ひともみもうで追っ付いて」
[訳] ひとふりむちをあて追いついて。◇「もう」はウ音便。
④
厳しく鍛える。▽多く受身の形で用いる。
出典寿の門松 浄瑠・近松
「与次兵衛(よじべゑ)にもまれて」
[訳] 与次兵衛に(色の道で)厳しく鍛えられて。
た・む 【矯む・揉む】
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
①
伸ばしたり曲げたりして、形を整える。
出典奥の細道 松島
「屈曲おのづからためたるがごとし」
[訳] 屈曲しているようすは自然に形を整えたかのようだ。
②
制御する。
出典平家物語 九・生ずきの沙汰
「舎人(とねり)あまた付いたりけれども、なほ引きもためず」
[訳] 舎人が大勢付いていたが、それでも(綱を)引いて制御することもできず。
③
偽る。
④
(弓に矢をつがえて)ねらいをつけて、矢を放たない。
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