学研全訳古語辞典 |
わた・す 【渡す】
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
①
越えさせる。渡す。
出典更級日記 太井川
「夜ひと夜、船にてかつがつ物などわたす」
[訳] 一晩中、船でどうにか、やっと荷物などを(向こうの岸へ)渡す。
②
別の場所に移す。移動させる。
出典源氏物語 若紫
「今日(けふ)・明日(あす)、わたし奉らむ」
[訳] 今日か明日のうちに、(私の屋敷に)お移しいたそう。
③
浄土へ行かせる。仏教の力で人々を救う。済度(さいど)する。▽此岸(しがん)から煩悩(ぼんのう)の川を越えさせて彼岸(ひがん)に渡す意。
出典仏足石歌
「もろもろ救ひわたし給(たま)はな」
[訳] 多くの人々をお救いになって、浄土へ行かせてくださいませ。
④
与える。授ける。やる。
出典宇治拾遺 六・四
「双六(すごろく)を打ちけるが、多く負けて、わたすべき物なかりけるに」
[訳] 双六を打ったが、さんざん負けて、(相手に)与えることができそうな物がなかったときで。
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
〔動詞の連用形に付いて〕広く…する。ずっと…する。めいめいが…する。▽ある動作・行為が広く、遠く及ぶ意を表す。
出典徒然草 一九
「大路(おほち)のさま、松立てわたして、はなやかにうれしげなるこそ」
[訳] 都大路のようすは、門松をずっと立て並べて、にぎやかにうれしそうなのこそ。
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