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 起つの意味

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学研全訳古語辞典

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た・つ 【立つ・起つ】

[一]自動詞タ行四段活用

活用{た/ち/つ/つ/て/て}


(人や動物が)立つ。(植物が)生える。(物が)立つ。


出典更級日記 初瀬


「門広う押し開けて、人々たてるが」


[訳] 門を広く押し開けて、供の人たちが立っている、その人たちが。


置いてある。止まる。


出典枕草子 祭のかへさ


「雲林院(うりんゐん)・知足院などのもとにたてる車ども」


[訳] 雲林院・知足院などのところに止まっている多くの牛車。


位置を占める。位置する。(ある位置に)立つ。


出典枕草子 うらやましげなるもの


「遅れて来(く)と見る者どもの、ただ行きに先にたちてまうづる、いとめでたし」


[訳] 後からくると見られた人たちが、どんどん先に立って参拝するのはとてもすばらしい。


地位につく。即位する。


出典大鏡 後一条


「春宮(とうぐう)にたたせ給(たま)ひき」


[訳] 皇太子の位におつきになりました。


(風・波などが)起こる。立つ。立ち昇る。


出典古今集 雑下


「風吹けば沖つ白波たつた山夜半(よは)にや君がひとり越ゆらむ」


[訳] ⇒かぜふけばおきつしらなみ…。


(季節が)やってくる。始まる。


出典奥の細道 旅立


「やや年も暮れ、春たてる霞(かすみ)の空に、白河の関越えんと」


[訳] ようやく年も暮れ、春がやってきて、霞がかかっている空を見るにつけ、白河の関を越えたいと。


知れ渡る。ひろがる。


出典拾遺集 恋一


「恋すてふわが名はまだきたちにけり人知れずこそ思ひそめしか」


[訳] ⇒こひすてふ…。


出発する。出かける。旅出つ。


出典徒然草 一九


「御仏名(おぶつみやう)、荷前(のさき)の使ひたつなどぞ、あはれにやんごとなき」


[訳] 御仏名、また諸陵墓への勅使が出発するさまなどは、趣深く尊い気がする。◇「発つ」とも書く。


(鳥が)飛び立つ。


出典新古今集 秋上


「心なき身にもあはれは知られけり鴫(しぎ)たつ沢の秋の夕暮れ」


[訳] ⇒こころなき…。


(月日が)過ぎる。経過する。


出典源氏物語 若紫


「たちぬる月の二十日のほどになむ」


[訳] 過ぎてしまった先月の二十日のそのころに。


[二]補助動詞タ行四段活用

活用{た/ち/つ/つ/て/て}


〔動詞の連用形に付いて〕盛んに…する。きわだって…する。


出典源氏物語 夕霧


「律師も騒ぎたち給(たま)うて」


[訳] 律師も盛んに騒ぎなさって。


[三]他動詞タ行下二段活用

{語幹〈た〉}


立たせる。立ち止まらせる。立てる。


出典万葉集 三三八六


「にほ鳥の(=枕詞(まくらことば))葛飾(かづしか)早稲(わせ)をにへすともそのかなしきを外(と)にたてめやも」


[訳] 葛飾の地で産した早生(わせ)の稲を神に供えていても、あのいとしい人を、外に立たせておこうか、外に立たせてはおけない。


止めて置く。


出典枕草子 鳥は


「雲林院(うりんゐん)・知足院などの前に車をたてたれば」


[訳] 雲林院・知足院などの前に牛車を止めて置くと。


つかせる。即位させる。


出典今昔物語集 三一・三三


「『やがて具して宮に返りて、后にたてむ』とのたまふに」


[訳] 「このまま内裏(だいり)に連れて帰って后につかせよう」と天皇がおっしゃると。


(門・戸などを)閉める。


出典枕草子 にくきもの


「あけていで入る所たてぬ人、いとにくし」


[訳] 開けて出入りする所を閉めない人はたいそう憎らしい。


建てる。


出典徒然草 二〇七


「亀山殿(かめやまどの)たてられんとて、地を引かれけるに」


[訳] 亀山の御殿をお建てになろうとして、地をならされると。◇「建つ」とも書く。


起こす。立たせる。立ちこめさせる。立ち昇らせる。


出典土佐日記 一・七


「海をさへおどろかして、波たてつべし」


[訳] 海の神までもびっくりさせて、きっと波を起こしてしまいそうだ。


広く知らせる。表面に出す。


出典徒然草 八五


「偽り飾りて名をたてんとす」


[訳] 偽り飾り立てて名を広く知らせようとする。


はっきり表す。押し通す。


出典源氏物語 若菜上


「心をたてて、世の中に過ぐさむことも」


[訳] 自分の考えを押し通して、世を過ごすようなことも。


(願(がん)や誓いを)立てる。


出典土佐日記 一二・二二


「二十二日に、和泉(いづみの)国までと、平らかに願(ぐわん)たつ」


[訳] 二十二日に、和泉の国(大阪府南部)まではと、平穏無事であるように願を立てる。


成り立たせる。もっぱらとする。


出典宇治拾遺 三・六


「この道をたてて世にあらんには、仏だによく書き奉らば、百千の家も出(い)できなん」


[訳] この絵の道をもっぱらにして世を送るには、仏さえ立派に描き申し上げたならば、百や千の家もきっとできるだろう。


出発させる。出向かせる。


出典平家物語 一一・能登殿最期


「新中納言使者をたてて『…』と宣(のたま)ひければ」


[訳] 新中納言(=平知盛)が使者を出向かせて「…」とおっしゃったので。◇「発つ」とも書く。


月日を過ごす。経過させる。


出典好色五人女 浮世・西鶴


「年波の日数(ひかず)をたてて、憂き世帯もふたり住みならば」


[訳] 年月を過ごして、辛い貧乏暮らしも二人で住むならば。


[四]補助動詞タ行下二段活用

活用{て/て/つ/つる/つれ/てよ}


〔動詞の連用形に付いて〕盛んに…する。ことさら…する。


出典更級日記 子忍びの森


「まづ胸あくばかりかしづきたてて」


[訳] まず気持ちが晴れるほどあなたをことさら大切に育てあげて。








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