学研全訳古語辞典 |
あ・つ 【当つ】
活用{て/て/つ/つる/つれ/てよ}
①
ぶつける。当てる。
出典平家物語 九・木曾最期
「痛手(いたで)なれば、真向(まつかう)を馬の頭(かしら)にあててうつぶし給(たま)へるところに」
[訳] (木曾(きそ)殿は)深手なので、兜(かぶと)の鉢の前正面を(乗っていた)馬の頭に当ててうつ伏せになられたところに。
②
さらす。向ける。
出典枕草子 成信の中将は
「廂(ひさし)にさし入りたる月にあてて、人の見しこそをかしかりしか」
[訳] ひさしに差し込んでいる月の光に向けて、人が読んでいた姿は趣のあるものだった。
③
分け与える。配分する。
出典大鏡 実頼
「夏冬の法服を賜(た)び、供料(くれう)をあて賜びて」
[訳] 夏冬の法服をお与えになり、供養料を配分しお与えになって。
④
推測する。当てる。
出典源氏物語 葵
「大将の君の御通ひ所、ここかしこと思(おぼ)しあつるに」
[訳] 大将の君(=源氏)がお通いになる女性は、あの方かこの方かと推測なさると。
⑤
直面させる。
出典宇津保物語 俊蔭
「汝(なんぢ)らをさへ罪にあてむ」
[訳] おまえたちまで罪に直面させよう。
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