学研全訳古語辞典 |
いた・し 【痛し・甚し】
活用{((く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ)}
①
痛い。▽肉体的に。
出典徒然草 一七五
「明くる日まで頭(かしら)いたく、物食はず」
[訳] 翌日まで頭が痛く、物も食べない。
②
苦痛だ。痛い。つらい。▽精神的に。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「胸いたき事なのたまひそ」
[訳] 胸が痛むことをおっしゃいますな。
③
甚だしい。ひどい。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「八月十五日ばかりの月にいでゐて、かぐや姫いといたく泣き給(たま)ふ」
[訳] 八月十五日も近いころの月になって、縁側に出てすわり、かぐや姫はたいそうひどくお泣きになる。
④
すばらしい。感にたえない。
出典源氏物語 若紫
「女かしづきたる家、いといたしかし」
[訳] 娘を大切に育てている家というのがとてもすばらしいよ。
⑤
見ていられない。情けない。
出典源氏物語 行幸
「古体なる御文書(ふみが)きなれど、いたしや」
[訳] 古風なお書きぶりだが、見ていられないなあ。
参考
①②は「痛し」、③④⑤は「甚し(=はなはだしい)」と大別できる。
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