学研全訳古語辞典 |
ほど
《接続》体言、活用語の連体形に付く。
①
〔大体の程度〕…ぐらい。
出典平家物語 九・敦盛最期
「弓矢取る身ほど、口惜しかりけるものはなし」
[訳] 弓矢を取る(武士の)身ぐらい、残念なものはない。
②
〔限度〕…だけ。
出典平家物語 一一・鶏合壇浦合戦
「矢だねあるほど射尽くして」
[訳] 矢のあるだけすべてを射つくして(しまい)。
③
〔比例した変化〕…につれてますます。
出典鑓権三 浄瑠・近松
「思案するほどねたましい」
[訳] あれこれ考えるにつれてますますねたましい。
参考
中世以降、名詞の「ほど」が助詞化したもの。平安時代以前の「ほど」はほぼ名詞である。
ほど 【程】
①
くらい。ほど。程度。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「ある人の毛の穴さへ見ゆるほどなり」
[訳] (明るさは)そこにいる人の毛の穴まで見えるくらいである。
②
ようす。状態。具合。
出典枕草子 野分のまたの日こそ
「髪は風に吹き迷はされて、少しうちふくだみたるが、肩にかかれるほど、まことにめでたし」
[訳] 髪は風に吹き乱されて、少しふくらんでいるのが、肩にかかっているようすが、実にすばらしい。
③
間。うち。
出典徒然草 三九
「目のさめたらんほど、念仏し給(たま)へ」
[訳] 目が覚めている間、念仏をしなさい。
④
ころ。時分。時節。
出典竹取物語 貴公子たちの求婚
「日暮るるほど、例の集まりぬ」
[訳] 日が暮れるころ、いつものように集まった。
⑤
時間。月日。年月。
出典源氏物語 桐壺
「ほど経(へ)ば、少しうち紛るることもや」
[訳] 時間がたてば、少しは気が紛れることもあるだろうか。
⑥
道のり。距離。
出典徒然草 八七
「遥かなるほどなり。口づきの男(をのこ)に、まづ一度せさせよ」
[訳] 遠い道のりである。馬の口取りの男に、とりあえず(酒を)一杯飲ませよ。
⑦
途中。
出典更級日記 東山なる所
「道のほど、…何となく青み、をかしう見えわたりたる」
[訳] 道の途中は、…何となく一面青々として趣深く見渡された。
⑧
あたり。付近。
出典源氏物語 若紫
「まみのほど、髪のうつくしげに削(そ)がれたる末も」
[訳] 目もとのあたりや、髪が美しい感じに切りそろえられている端も。
⑨
広さ。大きさ。
出典方丈記
「ほど狭(せば)しといへども、夜臥(ふ)す床(ゆか)あり」
[訳] (庵(いおり)は)広さが狭いといっても、夜寝る床がある。
⑩
身分。地位。家柄。
出典源氏物語 桐壺
「同じほど、それより下﨟(げらふ)の更衣(かうい)たちは」
[訳] (桐壺更衣(きりつぼのこうい)と)同じ身分や、それより低い身分の更衣たちは。
⑪
年ごろ。年齢。年配。
出典源氏物語 若紫
「この君だにも、かしこまりも聞こえ給(たま)ひつべきほどならましかば」
[訳] せめて姫君だけでも、お礼も申し上げることがおできになれそうな年ごろだったら。◆古くは「ほと」とも。
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