学研全訳古語辞典 |
ほととぎす…
分類和歌
出典百人一首
「ほととぎす鳴きつる方(かた)を眺(なが)むればただ有り明けの月ぞ残れる」
出典千載集 夏・藤原実定(ふぢはらのさねさだ)
[訳] ほととぎすがたしか鳴いたと思ってその方角を眺めると、(その姿はもう見えず、空には)ただ明け方の月だけが残っているよ。
鑑賞
「暁(あかつき)に郭公(ほととぎす)を聞く」の題による歌。
ほととぎす…
分類和歌
「ほととぎす鳴くや五月(さつき)のあやめ草あやめも知らぬ恋もするかな」
出典古今集 恋一・よみ人知らず
[訳] ほととぎすが鳴いているよ。その五月のあやめ草ではないが、物事の筋道もわからないほどに理性を失った恋をすることだ。
鑑賞
この歌は、『古今和歌集』で五巻も占める恋の部の冒頭にある。上(かみ)の句「ほととぎす鳴くや五月のあやめ草」は、同音の「あやめ」を導く序詞(じよことば)。「鳴くや」の「や」は間投助詞で、「恋もするかな」の「も」は強意の助詞。
ほととぎす…
分類俳句
「ほととぎす大竹藪(おほたけやぶ)を漏る月夜」
出典嵯峨日記 俳文・芭蕉(ばせう)
[訳] 夏の夜、ほととぎすが一声鳴いて飛び去った。ふり仰ぐと、うっそうと茂った竹藪の間から月の光が静かに漏れさしてくるばかりである。
鑑賞
京都の嵯峨(さが)で作った句で、嵯峨には竹藪が多い。季語は「ほととぎす」で、季は夏。
ほととぎす…
分類俳句
「ほととぎす平安城を筋違(すぢかひ)に」
出典蕪村句集 俳諧・蕪村(ぶそん)
[訳] 夜の空にほととぎすが鋭い鳴き声を一筋残して、碁盤の目のように整然とした京都の町を、はすかいに一直線に飛んで行ったことだ。
鑑賞
蕪村の作風である印象鮮明で絵画的な面と、「平安城」の語を用いるといった古典趣味とが、よく表れている。また、「筋違に」で、ほととぎすの飛ぶ方向と、街路の方向との対比を、鮮やかに描き出した。季語は「ほととぎす」で、季は夏。
ほととぎす 【時鳥・郭公・杜鵑・霍公鳥】
鳥の名。日本には夏の初めに各地に飛来して山中の樹林にすみ、秋の初めごろに南方へ去る。古来、夏の鳥として親しまれ、詩歌にも多く詠まれる。[季語] 夏。
ほととぎすのページへのリンク |