学研全訳古語辞典 |
ほろ-ほろ(と)
①
はらはら(と)。ぱらぱら(と)。▽木の葉や花などが散り落ちるようす。
出典笈の小文 俳文・芭蕉
「ほろほろと山吹(やまぶき)散るか滝の音―芭蕉」
[訳] ⇒ほろほろと…。
②
ばらばら(と)。▽人が分かれ散るようす。
出典源氏物語 夕霧
「修法(ずほふ)の壇こぼちて、ほろほろと出(い)づるに」
[訳] (僧たちは)修法の壇をうち壊して、ばらばらと退出するけれども。
③
はらはら(と)。ぽろぽろ(と)。▽涙がこぼれ落ちるようす。
出典源氏物語 少女
「いとどほろほろと泣き給(たま)ひて」
[訳] いよいよぽろぽろとお泣きになって。
④
びりびり(と)。ぼろぼろ(と)。▽物が裂けたり、砕けたりするようす。
出典源氏物語 紅葉賀
「とかく引きしろふ程に、ほころびほろほろと絶えぬ」
[訳] なにやかやと引っ張り合ううちに、(直衣の)縫い合わされていない部分がびりびりと切れてしまった。
⑤
ほろほろ(と)。▽雉(きじ)・山鳥などの鳴き声を表す。「ほろろ(と)」とも。
出典玉葉集 釈教
「山鳥のほろほろと鳴く声聞けば」
[訳] 山鳥のほろほろと鳴いている声を聞くと。
ほろほろと…
分類俳句
「ほろほろと山吹(やまぶき)散るか滝の音」
出典笈の小文 俳文・芭蕉(ばせう)
[訳] 滝の音がごうごうと響きわたっている。滝のほとりの山吹の花が、その音に誘われるかのようにはらはらと散っていることだ。
鑑賞
奈良県にある吉野川の急流、西河(にじつこう)の滝を訪れての作。吉野川のほとりの山吹は『古今和歌集』以来有名である。句は、散りやすい山吹のはかなさと、急流の音の激しさ・強さを取り合わせて、新鮮な趣にあふれる。「散るか」の「か」は詠嘆の終助詞。季語は「山吹」で、季は春。
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