学研全訳古語辞典 |
い-ま・す 【坐す・在す】
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
活用{せ/し/す/する/すれ/せよ}
①
いらっしゃる。おいでになる。▽「あり」の尊敬語。
出典大鏡 六十四代
「いませぬ後なれど、この世の光はいと面目(めいぼく)ありかし」
[訳] (経邦殿は)いらっしゃらない後のことですが、この世の光栄で面目をほどこしたことですなあ。
②
おでかけになる。おいでになる。▽「行く」「来(く)」の尊敬語。
出典源氏物語 浮舟
「右大将の宇治へいますること、なほ絶え果てずや」
[訳] 右大将(=薫(かおる))が宇治へおでかけになることは、すっかりなくなっていないのか。
活用{せ/せ/す/する/すれ/せよ}
いらっしゃるようにさせる。いらっしゃっていただく。▽上代の用法で、「あらしむ」「行かしむ」などの尊敬語。させる対象を尊敬するが、させる側の謙譲語のように用いる。
出典万葉集 三七四九
「他国(ひとくに)に君をいませて」
[訳] 他国にあなたをいらっしゃるようにさせて。
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
活用{せ/し/す/する/すれ/せよ}
〔活用語の連用形、またはそれに助詞「て」の付いた形に付いて〕…て(で)いらっしゃる。…て(で)おいでになる。▽尊敬の意を表す。
出典枕草子 関白殿、二月二十一日に
「をこなりと見てかく笑ひいまするが、恥づかし」
[訳] 愚かだと思ってこのように笑っていらっしゃるのが、恥ずかしい。
活用{せ/せ/す/する/すれ/せよ}
〔動詞の連用形に付いて〕…ていらっしゃるようにさせる。…おいでにならせる。▽尊敬の意を表す。
出典万葉集 七五九
「いかならむ時にか妹(いも)を葎生(むぐらふ)の汚き屋戸(やど)に入りいませなむ」
[訳] いつどんなときであったらあなたを雑草の生えているようなむさくるしい我が家に入っていらっしゃるようにさせることができるだろうか。
語の歴史
[一]の自動詞は上代・中古初期までは四段に活用し、それ以後サ変になる。[二]の他動詞は中古以後は数が少ない。
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