学研全訳古語辞典 |
いづくにか…
分類和歌
「いづくにか舟泊(ふなは)てすらむ安礼(あれ)の崎(さき)漕(こ)ぎ廻(た)み行(ゆ)きし棚(たな)なし小舟(をぶね)」
出典万葉集 五八・高市黒人(たけちのくろひと)
[訳] 今ごろはどこに停泊していることであろうか。安礼の崎を漕いで迂回(うかい)して行ったあの舟棚もない小さな舟は。
鑑賞
持統上皇の三河(愛知県東半部)御幸(みゆき)に従って旅したときの歌。高市黒人は旅の叙景歌人として知られる。夕暮れどき、昼間見た、安礼の崎(未詳。愛知県御津(みと)町の崎ともいう)を巡って視界から去って行った小さな舟を思い出して、その行方を案じている。「棚なし小舟」の語に、当時の旅中の不安な思いが象徴されている。
いづくにかのページへのリンク |