学研全訳古語辞典 |
やさ・し 【恥し・優し】
活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}
①
身も細るほどだ。つらい。肩身が狭い。消え入りたい。たえがたい。
出典万葉集 八九三
「世の中を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」
[訳] ⇒よのなかを…。
②
気恥ずかしい。きまりが悪い。
出典竹取物語 御門の求婚
「昨日今日御門(みかど)ののたまはむことにつかむ、人聞きやさし」
[訳] ほんの昨日今日、帝(みかど)がおっしゃることに従うとしたら、世間への手前きまりが悪い。
③
遠慮がちだ。慎み深い。礼節がすぎる。
出典大鏡 師尹
「また人の奉り代ふるまでは置かせ給(たま)ひて、とり動かすことはせさせ給はぬ。あまりやさしきことなりな」
[訳] また、ほかの人が贈り物をさしあげて、それと代えるまでは置かせなさって、取り片付けることはおさせにならない。あまりに礼節がすぎることだな。
④
しとやかだ。上品だ。優美だ。
出典源氏物語 蜻蛉
「いと若やかに愛敬(あいぎやう)づき、やさしきところ添ひたり」
[訳] とても若々しくかわいらしく、しとやかなところが加わっている。
⑤
けなげだ。殊勝だ。感心だ。
出典平家物語 七・実盛
「あなやさし。…み方(かた)の御勢(おんせい)は皆落ち候ふに、ただ一騎残らせ給ひたるこそ優(いう)なれ」
[訳] なんと殊勝なことよ。…味方の兵士は皆逃げましたのに、ただ一騎残っていらっしゃるのはりっぱなことだ。
参考
現代語の「やさ(易)しい」もこの語から生じた形で、同語源である。
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