学研全訳古語辞典 |
と・る 【取る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
握り持つ。手に取る。得る。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「中将に天人とりて伝ふ」
[訳] (かぐや姫の手から)天人は(壺(つぼ)を)取って中将に手渡す。
②
捕らえる。つかまえる。
出典徒然草 一〇
「烏(からす)の群れゐて、池の蛙(かへる)をとりければ」
[訳] 烏が群がっていて、池の蛙をつかまえたので。◇「捕る」とも書く。
③
採取する。収穫する。
出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち
「野山にまじりて竹をとりつつ、よろづのことに使ひけり」
[訳] 野山に分け入って、竹を採取しては、いろいろなことに使っていた。◇「採る」とも書く。
④
取り上げる。没収する。奪う。討ち平らげる。
出典徒然草 八九
「猫の経(へ)上がりて、猫またになりて、人とることはあなるものを」
[訳] 猫が年を経て化けて、猫またになって、人の命を奪うことがあるということだのに。
⑤
選び定める。選び用いる。
出典十訓抄 三
「京に歌合(うたあはせ)ありけるに、小式部内侍(こしきぶのないし)、歌詠みにとられて」
[訳] 都で歌合わせがあったときに、小式部内侍が歌人として選ばれて。
⑥
あやつる。(拍子を)とる。
出典源氏物語 梅枝
「拍子とりて『梅が枝(え)』を出(い)だしたるほど」
[訳] 笏(しやく)で拍子をとって、催馬楽(さいばら)の「梅が枝」を謡い出したようすが。
⑦
取り去る。取り除く。
出典今昔物語集 一・一三
「剣(つるぎ)をもっては頭(かしら)をとり」
[訳] 剣を取って頭を切り取り。
⑧
〔「…にとりて」「…にとって」の形で〕…に関連して。…に関して。
出典方丈記
「ただわが身一つにとりて」
[訳] ただ私一人の身の上に関して。
取るのページへのリンク |