学研全訳古語辞典 |
は・る 【張る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
(氷が)はる。一面に広がる。
出典平家物語 九・木曾最期
「入り相(あひ)ばかりの事なるに、薄氷ははったりけり」
[訳] 夕暮れ時のころであったうえ、薄氷がはっていた。◇「はっ」は促音便。
②
(芽が)ふくらむ。出る。芽ぐむ。
出典万葉集 一七〇七
「山城(やましろ)のくせの鷺坂(さぎさか)神代より春ははりつつ秋は散りけり」
[訳] 山城の国の久世の鷺坂では神代から春は芽が出ては秋には散ったことだ。
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
一面に広げる。(縄などを)張る。
出典徒然草 一〇
「鳶(とび)ゐさせじとて、縄をはられたりけるを」
[訳] とびを止まらせまいとして、縄をお張りになっていたのを。
②
張りつける。(紙などを)張る。
出典枕草子 中納言まゐり給ひて
「隆家(たかいへ)こそいみじき骨は得て侍(はべ)れ。それをはらせて参らせむとするに」
[訳] (わたくし)隆家は、とてもすばらしい扇の骨を手に入れましたよ。それに紙を張らせてさしあげようと思いますが。
③
(気を)引き締める。緊張させる。
出典太平記 一七
「おのおの気をはり心を専(もつぱ)らにして」
[訳] それぞれが気を引き締めて心を集中して。
④
構え設ける。張る。
出典平家物語 八・室山
「平家は陣を五つにはる」
[訳] 平家は陣を五か所に構え設ける。
⑤
平手でたたく。なぐる。
出典平家物語 八・鼓判官
「わ殿を鼓判官(つづみはうがん)といふは、よろづの人に打たれたうか、はられたうか」
[訳] あなたを鼓判官というのは、多数の人に打たれなさったからか、たたかれなさったからか。◇「張る」は「鼓を張る」と「頰(ほお)を張る」とを通じさせた表現。
張るのページへのリンク |