学研全訳古語辞典 |
こは・し 【強し】
活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}
①
しっかりしている。強い。
出典大鏡 道長上
「さるべき人は、…御守りもこはきなめり」
[訳] そうなる(=偉くなる)はずの人は、…神仏のご加護も強いものらしい。
②
強情だ。がんこだ。手ごわい。
出典枕草子 くるしげなるもの
「こはき物の怪(け)にあづかりたる験者(げんざ)」
[訳] がんこな物の怪の調伏(ちようぶく)を受け持った修験者(しゆげんじや)。
③
堅い。ごわごわしている。
出典枕草子 きよげなる男の
「こはからぬ烏帽子(えぼうし)振りやりつつ」
[訳] 堅くないえぼしの先を後ろに振りのけながら。
④
険しい。
出典大鏡 道長下
「坂のこはきをのぼり侍(はべ)りしかば」
[訳] 坂の険しいところを登りましたので。
⑤
恐ろしい。こわい。
出典花子 狂言
「山の神はこはし、身どもがこはうないな」
[訳] 山の神様は恐ろしい、おれは恐ろしくないな。◇「こはう」はウ音便。
語の歴史
現代語の「こわい」は、一般に恐ろしいの意を表すが、これは⑤のように、室町時代後期ごろから現れた意味と思われる。
こわし 【強し】
⇒こはし
つよ・し 【強し】
活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}
①
丈夫だ。強い。
出典徒然草 一一七
「病なく身つよき人」
[訳] 病気がなくて体の丈夫な人。
②
気丈だ。(意志が)強い。
出典源氏物語 夕霧
「心一つにはつよくおぼせど」
[訳] 自分の心では強く(出家を)お思いになるが。
③
堅固だ。すきまがない。
出典源氏物語 末摘花
「障子(さうじ)手づからいとつよくさして」
[訳] ふすまを自分の手ですきまもなく閉めて。
④
はげしい。きびしい。[反対語]①~④弱(よわ)し。
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