学研全訳古語辞典 |
い・く 【行く・往く】
活用{か/き/く/く/け/け}
①
行く。
②
うまくはかどる。
③
満足する。納得がいく。
出典土佐日記 二・五
「幣(ぬさ)には御心のいかねば」
[訳] 幣では(神様の)お心に満足がいかないから。
参考
(1)「ゆく」のほうが広く用いられたが、中古になって、「いく」「ゆく」が併用されるようになった。(2)和歌では、「限りとて別るる道の悲しきにいかまほしきは命なりけり」(『源氏物語』)〈⇒かぎりとて…。〉のように、「生く」とかけて用いることが多い。
ゆ・く 【行く・往く】
活用{か/き/く/く/け/け}
①
出かけて行く。去って行く。進んで行く。通りすぎて行く。
出典古今集 春上
「春霞(はるがすみ)立つを見捨ててゆく雁(かり)は花なき里に住みやならへる」
[訳] ⇒はるがすみ…。
②
移り行く。過ぎ去る。流れて行く。
出典猿蓑 俳諧
「ゆく春を近江(あふみ)の人と惜しみける―芭蕉」
[訳] ⇒ゆくはるを…。
③
(物事が)思うように進む。はかどる。順調にゆく。
出典源氏物語 絵合
「筆のゆく限りありて、心よりは、事ゆかずなむ、思う給(たま)へられしを」
[訳] 筆が思うように進むには限度があって、心で思うほどには、事がはかどらないと思い申されましたので。
④
この世を去る。死ぬ。逝去(せいきよ)する。
出典万葉集 三七八九
「あしひきの(=枕詞(まくらことば))山縵(やまかづら)の児今日ゆくとわれに告げせば帰り来(こ)ましを」
[訳] 縵児(=娘の名)が今日死ぬと私に知らせてくれたなら、帰って来たものを。
⑤
(心が)晴れ晴れする。すっきりする。せいせいする。満足する。
出典源氏物語 藤裏葉
「遣水(やりみづ)の水草(みくさ)も搔(か)きあらためて、いと、心ゆきたる気色(けしき)なり」
[訳] 遣水の中の水草もかき出して、(流れる水も)たいへん、心がせいせいしたようすである。
活用{か/き/く/く/け/け}
〔動詞の連用形に付いて〕いつまでも…しつづける。ずっと…する。だんだんと…する。▽動作・状態が継続し、進行する意を表す。
出典源氏物語 桐壺
「いとあつしくなりゆき」
[訳] (桐壺更衣(きりつぼのこうい)の病気が)たいへん、だんだんと重くなってゆき。
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