学研全訳古語辞典 |
むな・し 【空し・虚し】
活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}
①
からっぽだ。中に何もない。
出典平家物語 一一・内侍所都入
「主もなきむなしき舟は、潮に引かれ、風に従つて、いづくをさすともなく揺られ行くこそ悲しけれ」
[訳] 乗り手のいないからっぽな舟は、潮に流され、風に吹かれて、どこを目ざすともなく揺られて行くのが悲しい。
②
うそだ。事実無根だ。
出典源氏物語 澪標
「相人(さうにん)の言(こと)むなしからず」
[訳] 人相見の言葉はうそではない。
③
むだだ。効果がない。
出典方丈記
「むなしく春かへし、夏植うる営みありて、秋刈り、冬収むるぞめきはなし」
[訳] むだに春耕し、夏の田植えの仕事だけがあって、秋に刈り取り、冬に(倉に)しまうにぎわいがない。
④
はかない。かりそめだ。
出典万葉集 七九三
「世の中はむなしきものと知る時しいよよますます悲しかりけり」
[訳] ⇒よのなかはむなしきものと…。
⑤
からだだけあって魂がない。死んでいる。
出典源氏物語 桐壺
「むなしき御骸(おほんから)を見る見る」
[訳] からだだけあって魂がない(桐壺更衣(きりつぼのこうい)の)ご遺体を目の前に見ながら。
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