学研全訳古語辞典 |
くう・なり 【空なり】
活用{なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ}
それ自体には絶対的な実体がない。
出典平家物語 一一・大臣殿被斬
「善も悪もくうなりと観ずるが」
[訳] 善も悪も、それ自体には絶対的な実体がないと真理を悟ることが。◆仏教語。
そら・なり 【空なり】
活用{なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ}
①
心がうつろだ。上の空だ。
出典古今集 恋五
「秋風は身を分けてしも吹かなくに人の心のそらになるらむ」
[訳] 秋風は人の体を中に分けいって吹くわけではないのに、あの人はどうして心がうつろになって冷たくなっているのだろう。
②
いい加減だ。あてにならない。
出典源氏物語 帚木
「『それ、しかあらじ』と、そらに、いかがは推し量り思ひくたさむ」
[訳] 「それは、そうではあるまい」と、いい加減に、どうして当て推量で軽べつするのであろうか。
③
〔連用形「そらに」の形で〕物を見ないで。暗記していて。そらんじていて。
出典更級日記 かどで
「わが思ふままに、そらにいかでか覚え語らむ」
[訳] 自分の思うとおりに、(姉たちは物語を)そらんじていてどうして思い出して話せようか、(いや、話せない)。
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