学研全訳古語辞典 |
おと・す 【落とす】
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
①
落とす。(涙を)こぼす。
出典伊勢物語 九
「乾飯(かれいひ)の上に涙おとしてほとびにけり」
[訳] 乾ほし飯(いい)の上に涙をこぼして(乾し飯が)ふやけてしまった。
②
なくす。紛失する。
出典源氏物語 若菜下
「昨夜(よべ)のかはほりをおとして」
[訳] 昨夜のかわほり扇(=紙を片側だけ張った扇)をなくして。
③
漏らす。抜かす。
出典枕草子 中納言まゐり給ひて
「一つなおとしそ」
[訳] 一つも(書き)漏らすな。
④
病気を治す。つきものを取り除く。
出典十訓抄 一〇
「さるべき験者(げんじや)ども、おとしかねたりけるに」
[訳] しかるべき修験者たちが、つきものを取り除きかねていたところ。
⑤
逃げのびさせる。逃がす。
出典太平記 一
「これは謀叛(むほん)の輩(ともがら)をおとさじがための謀(はかりごと)なり」
[訳] これは謀叛の人々を逃がすまいとするための策略だ。
⑥
攻め取る。陥落させる。
出典太平記 七
「人のみ討たれておとすことありがたし」
[訳] 人ばかり討たれて攻め取ることはむずかしい。
⑦
劣った扱いをする。劣らせる。
出典源氏物語 少女
「いまひと方の御けしきもをさをさおとし給(たま)はで」
[訳] もうお一方のごようすもすこしも劣った扱いをしなさらないで。
⑧
見下げる。軽べつする。
出典源氏物語 若菜下
「人におとされ給(たま)へる御ありさまとて」
[訳] 他の人から軽べつされなさっている(女三の宮の)ごようすだからといって。◇「貶す」とも書く。
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