学研全訳古語辞典 |
とど・む 【止む・留む・停む】
活用{み/み/む/むる/むれ/みよ}
とどめる。止める。
出典万葉集 八〇五
「世の事なればとどみかねつも」
[訳] この世の当然のことなので(老いることは)とどめられないよ。
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
①
引きとめる。とどめる。抑える。制止する。
出典万葉集 三三四八
「夏麻(なつそ)びく(=枕詞(まくらことば))海上潟(うなかみがた)の沖つ州(す)に舟はとどめむ」
[訳] 海上潟の沖の州に舟をとどめよう。
②
中止する。やめる。
出典枕草子 説経の講師は
「にくげなるは罪や得(う)らむと覚ゆ。このことはとどむべし」
[訳] 顔の醜い僧は仏罰を受けるだろうと思う。このことは(言うのを)やめるのがよい。
③
あとに残す。
出典源氏物語 桐壺
「御子(みこ)をばとどめ奉りて、忍びてぞ出(い)で給(たま)ふ」
[訳] 御子を宮中にお残し申し上げて、こっそりお出掛けになる。
④
集中する。(注意を)向ける。
出典伊勢物語 四四
「この歌は、あるが中におもしろければ、心とどめてよまず、腹に味はひて」
[訳] この歌は、たくさんある中でも特におもしろいので、特に気持ちを集中させて、詠誦(えいず)せず、心底味わって(みるべきものであろう)。
参考
[一]は連用形の用例しか見えない。
と・む 【止む・留む・停む】
活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}
①
(進むのを)とめる。
出典新古今集 冬
「駒(こま)とめて袖(そで)うちはらふ陰もなし」
[訳] ⇒こまとめて…。
②
後に残す。とどめる。
出典源氏物語 若紫
「面影は身をも離れず山桜心の限りとめてこしかど」
[訳] あの人の面影は私から離れない山桜のようだ。私の心は全部後に残して来たのだけれど。
③
つなぎとめる。
出典後撰集 秋中
「白露(しらつゆ)に風の吹きしく秋の野は貫(つらぬ)きとめぬ玉ぞ散りける」
[訳] ⇒しらつゆに…。
④
〔「心をとむ」「目をとむ」の形で〕関心をもつ。注目する。
出典源氏物語 葵
「神などは目もこそとめ給(たま)へ」
[訳] 神などが目をつけなさると大変だ。
⑤
(船を)停泊させる。(人を)宿泊させる。
出典万葉集 三六二七
「船とめて浮き寝をしつつ」
[訳] 船を停泊させてその中で寝ながら。◇「泊む」とも書く。
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