学研全訳古語辞典 |
やつ・す 【俏す・窶す】
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
①
(服装を)目立たないようにする。みすぼらしくする。
出典源氏物語 若紫
「心恥づかしき人住むなる所にこそあなれ、あやしうもあまりやつしけるかな」
[訳] (こちらが気おくれするほど)立派な人が住んでいるという所であるようだ、みっともなくあまりにひどく(身なりを)みすぼらしくしたものだなあ。
②
出家姿に変える。僧や尼の姿にする。
出典源氏物語 夢浮橋
「心もなく、たちまちに形をやつしてけること、と胸つぶれて」
[訳] 前後のみさかいもなく、即座に(浮舟の)姿を尼の姿にしてしまったことよと、心が乱れて。
③
〔「身をやつす」の形で〕やせる思いがする。没入する。熱中する。
出典醒睡笑 咄本
「連歌に身をやつし」
[訳] 連歌に熱中し。
④
まねをする。もじる。
出典日本永代蔵 浮世・西鶴
「玄宗(げんそう)の花軍(はないくさ)をやつし、扇軍(あふぎいくさ)とて」
[訳] 玄宗皇帝の花軍というものをまねして、扇軍だといって。
⑤
省略する。くずす。くつろぐ。乱す。
出典好色一代男 浮世・西鶴
「事(こと)過ぎて、あとはやつして乱れ酒」
[訳] 事(=茶の湯)が終わって、あとはくつろいで自由な酒盛り。
参考
自動詞「やつる」の他動詞形。「やつる」がマイナスの意味を持つのに対して、他動詞の「やつす」は意志を持ってすることを表す。
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