学研全訳古語辞典 |
にほ・ふ 【匂ふ】
活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}
①
美しく咲いている。美しく映える。
出典万葉集 四一三九
「春の苑(その)紅(くれなゐ)にほふ桃の花下照(したで)る道に出(い)で立つ乙女(をとめ)」
[訳] ⇒はるのその…。
②
美しく染まる。(草木などの色に)染まる。
出典万葉集 一六九四
「細領巾(たくひれ)の(=枕詞(まくらことば))鷺坂山(さぎさかやま)の白躑躅(しらつつじ)われににほはね妹(いも)に示さむ」
[訳] 鷺坂山の白つつじよ、私の衣に染まってほしい。妻に見せよう。
③
快く香る。香が漂う。
出典古今集 春上
「人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香(か)ににほひける」
[訳] ⇒ひとはいさ…。
④
美しさがあふれている。美しさが輝いている。
出典万葉集 二一
「紫草(むらさき)のにほへる妹(いも)を憎くあらば人妻ゆゑに我恋ひめやも」
[訳] ⇒むらさきのにほへるいもを…。
⑤
恩を受ける。おかげをこうむる。
出典源氏物語 真木柱
「ほとりまでもにほふためしこそあれ」
[訳] その縁のある人々までおかげをこうむる例もあるのだ。
活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}
香りを漂わせる。香らせる。
出典古今集 冬
「花の色は雪に交じりて見えずとも香をだににほへ人の知るべく」
[訳] 梅の花の色は雪の色にまじって見えなくても、せめて香りだけでも香らせよ。梅の花があると人が知るように。
活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}
染める。色づける。
出典万葉集 三八〇一
「住吉(すみのえ)の岸野の榛(はり)ににほふれどにほはぬ我やにほひて居(を)らむ」
[訳] 住吉の岸辺の野の榛(はん)の木で染めても染まらない私だけれども(この翁(おきな)に)染まっていくことだろうか。
匂ふのページへのリンク |