学研全訳古語辞典 |
すずろ・なり 【漫ろなり】
活用{なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ}
①
何とはなしだ。何ということもない。
出典源氏物語 若紫
「いみじく泣くのを見給(たま)ふも、すずろに悲し」
[訳] (尼君が)ひどく泣くのを(源氏が)ご覧になるのも、何とはなしに悲しい気がする。
②
思いがけない。予期していない。
出典伊勢物語 九
「つた・かへでは茂り、もの心細く、すずろなる目を見ることと思ふに」
[訳] つたやかえでが茂っていて、なんとなく心細く、思いがけない(ひどい)目にあうことだと感じていると。
③
無関係だ。筋違いだ。
出典大和物語 一四八
「すずろなる者に、なにか多く賜(た)ばむ」
[訳] 無関係な者に、どうしてたくさんおやりになるのだろうか。
④
むやみやたらだ。
出典徒然草 一六八
「大方は知りたりとも、すずろに言ひ散らすは」
[訳] 大体は知っていても、むやみやたらに言い散らすのは。◆「すぞろなり」「そぞろなり」とも。
すぞろ・なり 【漫ろなり】
「すずろなり」に同じ。
そぞろ・なり 【漫ろなり】
活用{なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ}
①
何ということがない。何とはなしである。
出典今昔物語集 二八・四二
「障子のそぞろに倒れかかるなりけり」
[訳] 障子が何ということもなく倒れかかるのであった。
②
無関係だ。筋違いだ。▽いわれや根拠がないさま。
出典蜻蛉日記 中
「この君の、かくそぞろなる精進(しやうじ)をしておはするよ」
[訳] この(道綱の)君が、このように無関係な精進(しようじん)をしていらっしゃるよ。
③
むやみだ。わけもない。
出典徒然草 七三
「その道知らぬは、そぞろに神のごとくに言へども」
[訳] その専門の分野を知らない人は、むやみに神様のように尊んで言うけれども。◆「すずろなり」とも。
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