学研全訳古語辞典 |
あいだ 【間】
⇒あひだ
あはひ 【間】
①
(物と物との)あいだ。すきま。
出典伊勢物語 七
「伊勢(いせ)・尾張(をはり)のあはひの海づらを行くに」
[訳] 伊勢の国(三重県)と尾張の国(愛知県の一部)のあいだの海岸を行く時に。
②
仲。間柄。
出典源氏物語 宿木
「いとよきあはひなればかたみにぞ思ひかはすらむ」
[訳] (二人は)とてもよい仲なので、互いに思い合っていることであろう。
③
組み合わせ。つりあい。色の調和。
出典源氏物語 浮舟
「濃き衣(きぬ)に紅梅の織物など、あはひをかしく着替へて居給(たま)へり」
[訳] (浮舟は)濃い紫の単衣(ひとえ)の上に紅梅襲(こうばいがさね)の織物など、つりあいも面白く着替えて座っていらっしゃる。
④
情勢。形勢。
出典平家物語 一一・逆櫓
「あはひ悪(あ)しければ、引くは常の習ひなり」
[訳] 形勢が悪いので、引き上げるのが普通のやり方だ。
あひ 【間】
あいだ。
あひだ 【間】
①
(空間的にみた)あいだ。すきま。隔たり。
出典万葉集 二四四八
「白玉のあひだ開けつつ貫(ぬ)ける緒(を)もくくり寄すればまた逢(あ)ふものを」
[訳] 白玉と白玉とのあいだをあけて通したひもも、くくり寄せると、またくっつくのだから、私たちも遠く離れても、また会えるだろう。
②
(時間的にみた)あいだ。期間。うち。
出典土佐日記 一・一一
「かかるあひだに、みな、夜明けて、手洗ひ、例のことどもして、昼になりぬ」
[訳] こうしているうちに、すっかり夜が明けて、手を洗い、いつものことなどをして、昼になった。
③
(時間的な)切れ目。絶え間。
出典万葉集 三七八五
「ほととぎすあひだしまし置け汝(な)が鳴けば吾(あ)が思(も)ふこころいたもすべなし」
[訳] ほととぎすよ、しばらく切れ目をいれて(鳴いて)くれ。おまえが鳴くと、私の物思いに沈む心がどうしようもなくなるのだよ。
④
仲。間柄。
出典今昔物語集 二九・五
「貞盛(さだもり)は、この僧ともとよりいみじき得意にて、いみじく親しく語らひたりけるあひだなりければ」
[訳] 貞盛は、この僧と以前からたいそう通じ合う関係で、とても親しく話し合っていた間柄であったので。
⑤
…ので。…だから。
出典平家物語 二・西光被斬
「昼は人目の繁う候ふあひだ、夜にまぎれて参って候ふ」
[訳] 昼は人目が多うございますので、夜にまぎれて参上いたしました。
参考
⑤は形式名詞化して接続助詞のように用い、原因・理由を表す。中古には、記録体の文章にしかみられなかったが、中世以降通常の和文にも使われるようになった。
あわい 【間】
⇒あはひ
-けん 【間】
①
建物の柱と柱との間を数える語。
出典源氏物語 夕霧
「半蔀(はじとみ)四、五けんばかり上げ渡して」
[訳] 半蔀を四、五間ばかりずっと上げて。
②
長さの単位。ふつう、一間は六尺(=約一・八メートル)。◆「間(ま)」の音読みから。
ま 【間】
①
すきま。あいだ。
出典源氏物語 野分
「春の曙(あけぼの)の霞(かすみ)のまより、おもしろきかば桜の咲き乱れたるを見る心地す」
[訳] 春の夜明けの霞の間から、みごとなかば桜が咲き乱れているのを見る心地がする。
②
柱と柱の間。
出典源氏物語 空蟬
「南の隅のまより、格子(かうし)叩(たた)きののしりて入(い)りぬ」
[訳] 南側の隅の柱の間から、格子を音高くたたいてはいった。
③
部屋。
出典枕草子 宮にはじめてまゐりたるころ
「次のまに、長炭櫃(ながすびつ)にひまなく居たる人々」
[訳] 次の部屋で、長い角火鉢のそばにすきまなく座っている女房たち。
④
うち。あいだ。▽連続している時間をさす。
出典土佐日記 二・一
「朝(あした)のま、雨降る」
[訳] 朝のうち、雨が降る。
あい 【合い・会い・逢い・相・間】
⇒あひ
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