学研全訳古語辞典 |
あ・ふ 【会ふ・逢ふ】
活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}
①
出会う。巡り合う。
出典伊勢物語 九
「もの心細くすずろなる目を見ることと思ふに、修行者(すぎやうざ)あひたり」
[訳] なんとなく心細く、思いがけないひどい目にあうことよと思っていると、修行者が(我々と)出会った。
②
結婚する。
出典竹取物語 貴公子たちの求婚
「この世の人は、男は女にあふことをす」
[訳] この世の人は、男は女と結婚することをする。
③
対する。向かう。
出典徒然草 一四二
「かたへにあひて『御子(みこ)はおはすや』と問ひしに」
[訳] そばの人に向かって、『お子さんはおいでか』と質問したところ。
④
争う。戦う。
出典万葉集 一四
「香具山(かぐやま)と耳梨山(みみなしやま)とあひしとき立ちて見に来(こ)し印南国原(いなみくにはら)」
[訳] 香具山と耳梨山が争ったときに、(阿菩(あぼ)の大神が)立って見に来た印南国原よ。
あ・ふ 【合ふ】
活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}
①
調和する。似合う。
出典枕草子 二月つごもり頃に
「げに今日の気色(けしき)にいとようあひたるも」
[訳] 本当に今日の気分にぴったり似合っているにつけても。
②
一つになる。一致する。
出典源氏物語 若紫
「この夢あふまで、また、ひとにまねぶな」
[訳] この夢が(事実と)一致するまでは、決して、だれにも言うな。
活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}
〔動詞の連用形に付いて〕みなで…する。互いに…し合う。
出典伊勢物語 九
「限りなく遠くも来にけるかなとわびあへるに」
[訳] この上もなく遠くまでもまあ来てしまったものだなあと、互いに嘆き合っていると。
あ・ふ 【和ふ】
活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}
味付けのため調味料に混ぜ合わせる。あえる。
出典今昔物語集 三一・三二
「其(そ)の突き懸けたる物を、鮨鮎(すしあゆ)にこそあへたりけれ」
[訳] その吐きかけたものを鮨にした鮎にあえていたのだったよ。
あ・ふ 【敢ふ】
活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}
堪える。我慢する。持ちこたえる。
出典源氏物語 宿木
「霜にあへず枯れにし園(その)の菊なれど」
[訳] 霜に堪えられず枯れてしまった庭園の菊であるけれども。
活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}
〔動詞の連用形に付いて〕すっかり…する。…しきる。
出典源氏物語 桐壺
「御かたち・心ばへ、ありがたく珍しきまで見え給(たま)ふを、え嫉(そね)みあへ給はず」
[訳] ご容貌(ようぼう)やご性質が世にもまれで珍しいまでにお見えになるのを、(人々も)憎み通すことがおできにならない。
参考
下に「ず」「なむ」を伴って用いられることが多い。
あ・ふ 【饗ふ】
活用{へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ}
食事のもてなしをする。
出典日本書紀 推古
「使人等に朝(みかど)にあへたまふ」
[訳] 使者たちに宮廷で食事のもてなしをしなさる。
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