学研全訳古語辞典 |
す・く 【好く】
活用{か/き/く/く/け/け}
①
打ち込む。異性に熱中する。色好みである。
出典伊勢物語 四〇
「昔の若人は、さるすける物思ひをなむしける」
[訳] 昔の若者は、そのような打ち込んだ恋をしたものだ。
②
風流に熱中する。風流を好もしがる。
出典発心集 六
「家貧しくして心すけりける」
[訳] (永秀法師は)家は貧しくても、心は風流に熱中していた。
活用{か/き/く/く/け/け}
好む。めでる。
出典伯母が酒 狂言
「その上甘いをすいて参る衆も御座り」
[訳] その上甘い物を好んでお食べになる方たちもおいでになり。◇「すい」はイ音便。
す・く 【梳く】
活用{か/き/く/く/け/け}
髪をとかす。くしけずる。
出典日本永代蔵 浮世・西鶴
「毎日髪かしらも自らすきて」
[訳] 毎日、頭髪も自分でとかして。
す・く 【漉く・抄く】
活用{か/き/く/く/け/け}
(紙などの)原料を水にとかし、簀(す)の上に薄く平らにひろげて作る。
出典源氏物語 鈴虫
「清らにすかせ給(たま)へるに」
[訳] きれいにおすかせになった紙に。
す-く 【秀句】
「しうく」に同じ。
す・く 【透く・空く】
活用{か/き/く/く/け/け}
①
すきまができる。まばらになる。
出典源氏物語 総角
「歯はうちすきて愛敬(あいぎやう)なげに言ひなす女あり」
[訳] 歯はまばらに抜けてかわいげがないようすで物を言う女がいる。
②
すけて見える。透き通る。
出典源氏物語 賢木
「薄物の直衣(なほし)・単衣(ひとへ)を着給(たま)へるに、すき給へる肌つき」
[訳] 薄物の直衣や単衣を着ていらっしゃるので、すけて見えていらっしゃる肌のようす。
③
(光・風が)すきまを通り抜ける。
出典更級日記 太井川
「風すくまじく引き渡しなどしたるに」
[訳] 風が通り抜けないように(幕を)引き回しなどしているのに。
す・く 【鋤く・犂く】
活用{か/き/く/く/け/け}
(鋤(すき)・鍬(くわ)などの農具を用いて、土を)掘り起こす。耕す。
出典徒然草 三〇
「古き墳(つか)はすかれて田となりぬ」
[訳] 古い墳墓は掘り起こされて田になってしまった。
す・く 【食く・飲く】
活用{か/き/く/く/け/け}
食べる。飲む。
出典源氏物語 若紫
「さるべき物作りて、すかせ奉り」
[訳] しかるべき護符などを作って、お飲ませ申し上げ。
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