学研全訳古語辞典 |
ます
《接続》動詞型活用語の連用形に付く。
活用{ませ/まし/ます・まする/ます・まする/ませ・ますれ/ませ・ませい・まし}
①
〔謙譲〕…申し上げる。お…する。
出典瓜盗人 狂言
「瓜(うり)を返しまする上は御損も御座らぬことで御座るほどに」
[訳] 瓜をお返しするからには(あなたにとって)ご損もございませんことでございますので。
②
〔丁寧〕…ます。
出典好色一代女 浮世・西鶴
「『我は京へ上りたらば追っ付け死にます』と言ふ」
[訳] 「私は京へのぼったならばすぐに死にます」と言う。◆中世後期以後の語。
語の歴史
「まゐ(参)らす」が変化した「まらする」からできた語で、現代語の助動詞「ます」につながる。
ま・す 【坐す・座す】
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
①
いらっしゃる。おいでである。おありである。▽「あり」の尊敬語。
出典万葉集 二四三
「王(おほきみ)は千歳(ちとせ)にまさむ」
[訳] 皇子さまは千年も(生きて)おいでになろう。
②
いらっしゃる。おいでになる。▽「行く」「来(く)」の尊敬語。
出典万葉集 四二七〇
「大君のまさむと知らば玉敷かましを」
[訳] 天皇さまがいらっしゃると知っていたならば玉石を敷いただろうに。
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
〔動詞の連用形に付いて〕…て(で)いらっしゃる。お…になる。▽尊敬の意を表す。
出典古今集 羇旅
「一年(ひととせ)に一度(ひとたび)来ます君待てば」
[訳] 一年に一度通っていらっしゃる夫君を待っているので。
ま・す 【増す・益す】
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
①
ふえる。激しくなる。
出典万葉集 三九六九
「痛けくの日に異(け)にませば」
[訳] 体の痛みが日に日に激しくなるので。
②
すぐれる。まさる。
出典万葉集 三四五
「価(あたひ)なき宝といふとも一杯(ひとつき)の濁れる酒にあにまさめやも」
[訳] 値段がつけられないほどに貴重な宝だといっても、一杯の濁り酒にどうしてまさろうか、いや、まさりはしない。◇「勝す」とも書く。
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
①
ふやす。増し加える。
出典源氏物語 胡蝶
「色をましたる柳」
[訳] 美しさを増し加えた柳。
②
まさるようにする。
出典源氏物語 初音
「色をも音(ね)をもますけぢめ、殊になむ分かれける」
[訳] (梅の花の)色も(楽の)調べもすぐれたものにする差が、まったく違うのだった。◇「勝す」とも書く。
ま・す 【申す】
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
申し上げる。▽「言ふ」の謙譲語。
出典栄花物語 月の宴
「『…人のそしられの負ひ給(たま)ふこと』と、嘆かしげにまし給ふ」
[訳] 「…人の非難を受けなさること」と、嘆かわしそうに申し上げなさる。
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
〔動詞の連用形に付いて〕…申し上げる。お…する。▽謙譲の意を表す。
出典大鏡 道隆
「『便(びん)なき事もこそ出(い)でくれ』と、人は受けまさざりけり」
[訳] 「不都合なことが起こるといけない」と人々は賛成申し上げなかった。
参考
「まうす」の変化した語。
ますのページへのリンク |