学研全訳古語辞典 |
こと-な・し 【事無し】
活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}
①
平穏無事である。何事もない。
出典万葉集 四二五四
「手拱(たうだ)きてことなき御代(みよ)と」
[訳] 手をこまねくままで平和な御代だと。
②
心配なことがない。
出典源氏物語 若菜上
「心苦しき御気色(けしき)の、下にはおのづから漏りつつ見ゆるを、ことなく消ち給(たま)へるも」
[訳] お気の毒なごようすが、隠しても自然に漏れ出て見えるのを、心配事がないように隠していらっしゃるのにつけても。
③
取り立ててすることがない。たいした用事もない。
出典源氏物語 若菜上
「おほやけ・わたくしにことなしや」
[訳] 朝廷にも個人としても何も用事はないよ。
④
たやすい。容易だ。
出典徒然草 一八九
「煩はしかりつる事はことなくて」
[訳] 面倒に思っていたことはたやすくて。
⑤
非難すべき点がない。欠点がない。
出典万葉集 二七五七
「ありつつ見れどことなき吾妹(わぎも)」
[訳] ずっと見ていても(何一つ)欠点のない妻よ。
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