仏

学研全訳古語辞典

ほとけ 【仏】

名詞

① 仏陀（ぶつだ）。真理を悟った者。▽信仰の対象となり、他を導き救うすぐれた存在。釈迦（しやか）仏・阿弥陀（あみだ）仏・薬師仏など。特に、釈迦。釈迦牟尼仏（しやかむにぶつ）。

出典 梁塵秘抄 法文歌

「ほとけは常にいませどもうつつならぬぞあはれなる」

[訳] ⇒ほとけはつねにいませども…。

② 仏像。

出典 更級日記 宮仕へ

「仏師にて、ほとけをいと多く造り奉りし功徳によりて」

[訳] 仏師であって、仏像をたいそうたくさん造り申し上げた功徳によって。

③ 仏法。仏教。

出典 源氏物語 蛍

「不孝（ふけう）なるは、ほとけの道にもいみじくこそ言ひたれ」

[訳] 親不孝であることは、仏法でも厳しく戒めて言っている。

④ （仏のように）慈悲深い人。正直な人。お人好し。好人物。

出典 心中天網島 浄瑠・近松

「たとへ私がほとけでも、男が茶屋者（ちややもの）請け出す、その贔屓（ひいき）せうはずがない」

[訳] たとえ私がお人好しでも、男が遊女を身請けする、その手助けをするはずがない。

⑤ 大切に思う人。▽多くは「あがほとけ」「わがほとけ」の形で、親愛の意味を込めた呼びかけに用いる。

出典 竹取物語 かぐや姫の昇天

「あがほとけ、なに事思ひ給（たま）ふぞ」

[訳] 私の大切な人よ、いったい何を思い悩んでおられるのか。

参考 「ほとけ」は、梵語ブダ（＝仏陀（ブツダ））の音訳「仏（ぶつ）」からの転、あるいは、やはり音訳の「浮図（ふと）」からの転とする説などがある。