学研全訳古語辞典 |
はつ-か・なり 【僅かなり】
活用{なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ}
①
かすかだ。ほのかだ。
出典古今集 恋一
「春日野(かすがの)の雪間(ゆきま)を分けて生ひ出(い)でくる草のはつかに見えし君はも」
[訳] ⇒かすがののゆきまをわけて…。
②
ほんのわずかだ。ちょっとだ。
出典源氏物語 若菜下
「今宵(こよひ)の遊びは、長くはあらではつかなるほどにと思ひつるを」
[訳] 今晩の管弦の遊びは、長く続けないで、ほんのわずかな時間で(やめよう)と思っていたのに。
参考
類義語「わづかなり」は分量の少なさを意味し別語だが、中世から混同が生じ、「はつかなり」が消滅した。⇒わづかなり
参考
わずかなり 【僅かなり・纔かなり】
⇒わづかなり
わづか・なり 【僅かなり・纔かなり】
活用{なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ}
①
ほんの少しだ。少しばかりだ。非常に小さい。わずかだ。▽語幹の形で副詞的にも用いる。
出典源氏物語 夕霧
「わづかなる下人(しもびと)をも言ひ調(ととの)へ」
[訳] 少しばかりの従者にも指図して統率し。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「わづか嘗(な)め給(たま)ひて」
[訳] (不死の薬を)少しばかりおなめになって。
②
〔「わづかに」の形で副詞的に用いて〕やっと。かろうじて。
出典方丈記
「古(いにし)へ見し人は、二、三十人が中にわづかに一人二人なり」
[訳] 昔会った人は、二、三十人の内、かろうじて一人か二人である。
③
貧弱だ。取るに足りない。たいしたことがない。
出典日本永代蔵 浮世・西鶴
「わづかなる商人(あきんど)なるが、次第に家栄えける」
[訳] (初めは)取るに足りない商人であるが、しだいに家は栄えた。
参考
「わづかなり」と「はつかなり」の違い「わづかなり」は本来、数量が極めて少ないさまや、かろうじて存在するさまを表す。それに対して、「はつかなり」は、ほんのちらりと見えたり現れたりするさまや、時間的にほんのわずかなさまを表す。(例「臥し待ちの月はつかにさし出でたる」竹取物語)
僅かなりのページへのリンク |