学研全訳古語辞典 |
そ-ち 【其方】
①
そちら。そっち。▽中称の指示代名詞。相手のいる方向をさし示す語。
出典万葉集 一九九
「霰(あられ)なすそちより来れば」
[訳] 霰のようにそちらから来るので。
②
なんじ。おまえ。▽対称の人称代名詞。目下の相手に用いる。
出典止動方角 狂言
「そちは大儀ながら、伯父ぢゃ人の方へいて」
[訳] おまえは面倒であろうが、伯父さんのところへ行って。◇中世以降の用法。
そなた 【其方】
①
そちら。そちらの方。▽中称の指示代名詞。
出典枕草子 清涼殿の丑寅のすみの
「御誦経(ずきやう)などあまたせさせ給(たま)ひて、そなたに向きてなむ念じ暮らし給ひける」
[訳] (左大臣は)僧に経を読ませることなどをたくさんさせなさって、そちら(=内裏(だいり)の方)を向いて一日じゅう祈念しなさった。
②
その方面。その点。▽中称の指示代名詞。
出典源氏物語 桐壺
「帝王の上(かみ)なき位にのぼるべき相(さう)おはします人の、そなたにて見れば、乱れ憂ふることやあらむ」
[訳] 帝(みかど)というそれより上のない位に進むはずの人相がおありになる人で、その方面(=帝位につく方)として見ると、世が乱れて心配なことがあるのではないか。
③
あなた。▽対称の人称代名詞。主に目下の相手に用いる。
出典世間胸算用 浮世・西鶴
「そなたの虎落(もがり)、今時は古し」
[訳] あなたのゆすりは、現在では古いよ。
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