学研全訳古語辞典 |
くち 【口】
①
口。▽身体の部分。
出典枕草子 にくきもの
「また、酒飲みてあめき、くちをさぐり」
[訳] また、酒を飲んでわめき、口(の中)をさぐり。
②
出入り口。出し入れ口。
出典奥の細道 平泉
「南部くちをさし固め、夷(えぞ)を防ぐと見えたり」
[訳] 南部領への出入り口を厳重に警戒し、蝦夷(えぞ)の侵入を防ぐためのように見える。
③
物言い。ことば。うわさ。評判。
出典源氏物語 若菜上
「すべて、世の人のくちといふ物なむ、誰(た)が言ひ出(い)づることともなく」
[訳] だいたい、世間の人のうわさという物は、だれが言い始めたことでもなく。
④
口縄。手綱(たづな)。
出典奥の細道 旅立
「馬のくちとらへて老いを迎ふる者は」
[訳] 馬の口縄を取って年をとっていく者(=馬子(まご))は。
⑤
切り口。直径。
出典平家物語 五・咸陽宮
「くち六尺の銅(あかがね)の柱」
[訳] 直径六尺(=約一八〇センチ)の銅の柱。
⑥
就職先。嫁入り先。
出典世間胸算用 浮世・西鶴
「奉公のくちあるこそ幸ひなれ」
[訳] 奉公できる就職先があるだけでも幸せだ。
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