学研全訳古語辞典 |
かた 【形・型・象】
①
(物の)姿。形。
出典万葉集 三八二〇
「夕づく日さすや川辺に作る屋のかたをよろしみ」
[訳] 夕日がさしている川辺に建てている家の形がよいので。
②
絵。
出典枕草子 清涼殿の丑寅のすみの
「北の隔てなる御障子(みさうじ)は、荒海のかた」
[訳] 北の仕切りであるついたて障子には、荒海の絵。
③
跡。跡形。
出典更級日記 富士川
「八橋(やつはし)は名のみして、橋のかたなくて」
[訳] 八橋は名前だけが残っていて、橋の跡形もなくて。
④
形式。慣例。
出典源氏物語 末摘花
「えかたのやうにもつづけ給(たま)はねば」
[訳] 形式どおりにも(文章を)お続けになることもできないので。
⑤
占いの結果。
出典万葉集 三四八八
「真柴(ましば)にも告(の)らぬ妹(いも)が名かたに出(い)でむかも」
[訳] めったに口に出さない妻の名が占いの結果に出てしまうのかなあ。
かたち 【形・容・貌】
①
(物の)形。外形。形態。
出典枕草子 草の花は
「夕顔は花のかたちも朝顔に似て」
[訳] 夕顔は、花の形も朝顔に似ていて。
②
容貌(ようぼう)。顔立ち。顔つき。
出典竹取物語 かぐや姫の生ひ立ち
「この児(ちご)のかたちけうらなること世になく」
[訳] この子(=かぐや姫)の容貌の清らかで美しいことといったら世にまたとなく。
③
美しい容姿(の人)。美人。
出典栄花物語 殿上の花見
「かたちを好ませ給(たま)ひて、今もよき若き人ども参り集まりて」
[訳] (女院は)美人をお好みになって、今も美しい若い人たちが(御殿に)参上し集まって。
④
(人の)姿。ようす。
出典源氏物語 手習
「まことの人のかたちなり」
[訳] (この女は魔物ではなく)正真正銘の人間の姿である。
なり 【形・態】
①
物のかたち。かっこう。
出典伊勢物語 九
「その山は…なりは塩尻(しほじり)のやうになむありける」
[訳] その(富士)山は…かっこうは塩尻のようであった。
②
身なり。服装。
出典落窪物語 一
「なりのいとあしくて」
[訳] 身なりがたいへんひどくて。
③
ありさま。ようす。状態。
参考
自然に生じたかたちをいう。「すがた」は意識してつくったかたちのことをいう。
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