学研全訳古語辞典 |
むまれしも…
分類和歌
「生まれしも帰らぬものをわが宿に小松のあるを見るが悲しさ」
出典土佐日記 二・一六
[訳] この家に生まれた子供も、死んでしまって帰らないというのに、庭に自然に生えた小松を見ることの悲しさよ。
鑑賞
帰京した紀貫之(きのつらゆき)を待っていたのは荒廃した自宅で、管理を頼んでいた隣家の無責任ぶりに落胆する。あてにならない人情に悲哀を感じながら荒れ果てた庭を見ると、留守の間に生えた小松があった。その姿に幼くして死んだ娘をしのび、伸びゆく命とはかない死とをくらべて、悲しみを新たにしている。
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