学研全訳古語辞典 |
かつ 【且つ】
①
一方では。同時に一方で。▽二つの事柄が並行して行われていることを表す。「かつ…かつ…」の形、また、単独でも用いられる。
出典方丈記
「よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたる例(ためし)なし」
[訳] (川の)流れが滞っている所に浮かんでいる水の泡は、一方では消え、同時に一方ではできて、そのまま(川の面に)長くとどまっている例はない。
②
すぐに。次から次へと。
出典徒然草 七三
「かつあらはるるをもかへりみず、口にまかせて言ひ散らすは」
[訳] (話しているはしからうそが)すぐにばれるのも気にかけないで、口からでまかせに勝手なことを言うのは。
③
ちょっと。ほんの少し。わずかに。やっと。
出典伊勢物語 一二八
「心をぞわりなきものと思ひぬるかつ見る人や恋しかるらむ」
[訳] 心というものを、わけのわからないものと思ったよ。ちょっと会った人がどうしてこんなに恋しいのだろうか。
その上。ほかに。また。
出典奥の細道 松島
「袋を解きてこよひの友とす。かつ杉風(さんぷう)・濁子(だくし)が発句(ほつく)あり」
[訳] ずた袋(の口)を解いて(松島の漢詩・和歌を取り出して)今夜の友とする。その上(袋の中には)杉風や濁子の作った発句もある。
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