学研全訳古語辞典 |
また・し 【全し】
活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}
①
完全だ。欠けたところがない。
出典枕草子 女のひとりすむ所は
「いたくあばれて、築地(ついひぢ)などもまたからず」
[訳] ひどく荒れて、土塀なども完全ではなく。
②
無事である。安全だ。
出典万葉集 二八九一
「あらたまの(=枕詞(まくらことば))年の緒(を)長くかく恋ひばまことわが命またからめやも」
[訳] 長い年月これほど(激しく)恋していたら、ほんとうに私の命は無事であろうか、いや、無事ではいられない。◆後に「まったし」とも。
まった・し 【全し】
活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}
①
完全だ。
出典平家物語 九・河原合戦
「一陣破れぬれば、残党まったからず」
[訳] (敵は)第一線が敗れているのであるから、残りの軍勢は、完全ではない。
②
安全だ。無事だ。
出典親任 謡曲
「汝(なんぢ)は命をまったう持ちて」
[訳] お前は命を無事に持って。◆形容詞「またし」の促音便。
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