学研全訳古語辞典 |
む・く 【向く】
活用{か/き/く/く/け/け}
①
向かう。(正面が)ある方向に対する。
出典徒然草 五六
「一人にむきて言ふを、おのづから人も聞くにこそあれ」
[訳] (教養ある人の話は)一人に向かって言うのを、自然にほかの人も聞くのである。
②
傾く。心や物事がある状態の方向に進む。
出典為兼卿和歌
「歌はいかなるものぞ。いかにとむきて、いかにと詠むべきぞ」
[訳] 歌はどのようなものか。どのように(心が)傾いて、どのように詠んだらよいのか。
③
うまく合う。似合う。
出典卯月紅葉 浄瑠・近松
「廓様(くるわやう)、今はむかぬと」
[訳] 廓ふうは、今は似合わないと。
活用{け/け/く/くる/くれ/けよ}
①
向ける。向かせる。
出典更級日記 大納言殿の姫君
「物もきたなげなるは、外方(ほかざま)に顔をむけて食はず」
[訳] 食べ物もきたならしいものは、よそに顔を向けて食べない。
②
(人を)行かせる。赴かせる。
出典平家物語 二・蘇武
「蘇武(そぶ)を大将軍にて五十万騎(ぎ)をむけらる」
[訳] 蘇武を大将軍として五十万騎をさしむけなさる。
③
従わせる。服従させる。
出典万葉集 八一三
「韓国(からくに)をむけ平らげて」
[訳] 新羅(しらぎ)の国を服従させ平定して。
④
(神や霊などに)供え物をする。手向(たむ)ける。
出典万葉集 六二
「海中(わたなか)に幣(ぬさ)取りむけて早帰り来(こ)ね」
[訳] 海神に幣を手向けて早く帰っておいで。
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