学研全訳古語辞典 |
あざ・る 【戯る・狂る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
取り乱して動き回る。
出典万葉集 九〇四
「立ちあざりわれ乞(こ)ひ祈(の)めど」
[訳] 取り乱し動き回って私は請い祈ったが。
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
①
ふざける。
出典土佐日記 一二・二二
「酔(ゑ)ひあきて、…あざれあへり」
[訳] ひどく酔っぱらって、…ふざけあっている。
②
儀式ばらない装いをする。くつろぐ。
出典源氏物語 紅葉賀
「あざれたる袿(うちき)姿にて」
[訳] くつろいだ袿姿で。
③
機転をきかす。しゃれた振る舞いをする。
出典枕草子 職の御曹司におはします頃、西の廂にて
「あざれたり。御簾(みす)の前にて、人にを語り侍(はべ)らむ」
[訳] (歌は)しゃれている。御簾の前で、女房の方々に披露しましょう。
さ・る 【戯る】
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
①
たわむれる。はしゃぐ。
出典枕草子 かたはらいたきもの
「旅だちたるところにて、下衆(げす)どもされゐたる」
[訳] よそに泊まった先で、(お供の)下男たちがはしゃいでいるの。
②
才気がある。気が利く。
出典源氏物語 紅葉賀
「『入(い)りぬる磯(いそ)の』と口ずさみて、口おほひし給(たま)へるさま、いみじうされて、うつくし」
[訳] 「入りぬる磯の」と口ずさんで、(袖(そで)で)口もとをお隠しになられた(紫の上の)ようすは、たいへん気が利いて、かわいらしい。
③
色気がある。
出典源氏物語 少女
「年の程よりはされてやありけむ」
[訳] (惟光(これみつ)の娘は)年齢の割には色気があったのだろうか。
④
しゃれている。風情がある。趣がある。
出典源氏物語 浮舟
「されたる常磐木(ときはぎ)の影茂れり」
[訳] 風情がある常磐木の姿は枝葉が茂っている。◆後に「ざる」とも。
そぼ・る 【戯る】
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
①
たわむれる。ふざける。
出典源氏物語 初音
「年の内の祝ひ言どもしてそぼれあへるに」
[訳] 一年の幸せを願う数々の祝い言を述べて、たわむれあっているところへ。
②
しゃれる。きどる。
出典源氏物語 胡蝶
「書きざま今めかしうそぼれたり」
[訳] (手紙の)書きようは現代的でしゃれている。
たはぶ・る 【戯る】
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
①
遊び興じる。
出典万葉集 九〇四
「立てれども居(を)れどもともにたはぶれ」
[訳] (わが子は)立っていても座っていても(親と)一緒に遊び興じ。
②
ふざける。冗談を言う。
出典徒然草 七五
「人にたはぶれ、物に争ひ」
[訳] 人にふざけて、物につけては争い。◆「たはむる」の古形。
たは・る 【戯る・狂る】
活用{れ/れ/る/るる/るれ/れよ}
①
みだらな行為をする。色恋におぼれる。
出典徒然草 三
「さりとて、ひたすらたはれたる方(かた)にはあらで」
[訳] そうはいっても、すっかり色恋におぼれているというのではなくて。
②
ふざける。たわむれる。
出典万葉集 一七三八
「容(かほ)よきによりてそ妹(いも)はたはれてありける」
[訳] 自分が美貌であるからと恋人はふざけているのだよ。
③
くだけた態度をとる。
出典源氏物語 藤裏葉
「公(おほやけ)ざまは、たはれてあざれたる方(かた)なりし」
[訳] 表向きには、くだけた態度をとって、儀式ばらない人であった。
たわぶる 【戯る】
⇒たはぶる
たわる 【戯る・狂る】
⇒たはる
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