学研全訳古語辞典 |
さだ 【時】
〔多く「さだ過ぐ」の形で〕時期。機会。盛りの年齢。
出典更級日記 夫の死
「年はややさだ過ぎゆくに」
[訳] 年はしだいに盛りの年齢を過ぎてゆくのに。
じ 【時】
①
一日を「六時(ろくじ)」に分けて行う「勤行(ごんぎやう)」の時刻。また、その「勤行」。◇仏教語。
②
とき。時刻。
しだ 【時】
とき。ころ。
参考
上代東国方言。現代でも用いる「寝しな」などの「しな」の古形という。
とき 【時】
①
(過ぎていく)時間。時の流れ。
出典徒然草 一九一
「若きどち、心とどめて見る人は、ときをも分かぬものなれば」
[訳] 若い者同士、互いに注意して見る人は、(見たり見なかったりという)時間の区別がないものなので。
②
(一昼夜を区分した)時間。時刻。
出典竹取物語 かぐや姫の昇天
「宵うち過ぎて、子(ね)のときばかりに」
[訳] 夜も更けて、子の時刻(=今の午前零時)ごろに。
③
時節。季節。
出典新古今集 雑中・伊勢物語九
「とき知らぬ山は富士の嶺(ね)いつとてか鹿(か)の子まだらに雪の降るらむ」
[訳] ⇒ときしらぬ…。
④
よい時機。好機。
出典万葉集 一八五五
「桜花ときは過ぎねど見る人の恋の盛りと今し散るらむ」
[訳] 桜の花をみるのによい時機は過ぎていないのに、見る人の惜しむ盛りだと思って、今こそ散っているのだろう。
⑤
時代。年代。世。
出典源氏物語 桐壺
「いづれの御(おほん)ときにか、女御(にようご)・更衣(かうい)あまたさぶらひ給(たま)ひける中に」
[訳] どの帝(みかど)の御治世であったろうか、女御や更衣がたくさんお仕えしておられたなかに。
⑥
時勢。時世。世のなりゆき。
出典伊勢物語 一六
「のちは世変はりとき移りにければ」
[訳] その後は世が変わって時勢が移ってしまったので。
⑦
その当時。そのころ。
出典源氏物語 蜻蛉
「ときの帝(みかど)の御むすめ」
[訳] そのころの帝の皇女。
⑧
(そういう状態の)時。折。場合。
出典徒然草 一〇九
「降るるときに、軒たけばかりになりて」
[訳] 降りてきている時に、軒の高さぐらいになって。
⑨
栄えている時期。勢いが盛んな時期。
出典古今集 雑下・詞書
「ときなりける人の、にはかにときなくなりて嘆くを見て」
[訳] 勢いが盛んな時期であった人が、急に盛んな勢いがなくなって嘆くのを見て。
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