学研全訳古語辞典 |
ただ・し 【正し】
活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}
①
正当だ。善だ。正しい。
出典古今集 仮名序
「これは、事の調ほり、ただしきをいふなり」
[訳] この歌は事柄が備わり、正しいのをいうのである。
②
きちんとしている。整っている。
出典平家物語 五・物怪之沙汰
「束帯ただしき上﨟(じやうらふ)」
[訳] 束帯がきちんとしている高貴な人。
③
道理に合っている。道徳に合っている。正しい。
出典平家物語 五・富士川
「おのおの礼儀をただしうして」
[訳] それぞれ礼儀を正しくして。◇「ただしう」はウ音便。
まさ・し 【正し】
活用{(しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ}
①
見込みどおりである。(予想したことが)本当である。
出典古今集 恋四
「かく恋ひむものとは我も思ひにき心の占(うら)ぞまさしかりける」
[訳] このように苦しく恋いこがれるであろうとは自分も思っていた。予感は本当であったよ。
②
正当である。正しい。
出典平家物語 四・通乗之沙汰
「まさしい太上法皇(だいじやうほふわう)の皇子を討ち奉るだにあるに」
[訳] 正当な太上法皇の皇子をお討ちすることさえ恐れ多いことなのに。◇「まさしい」はイ音便。
③
確かだ。
出典徒然草 七一
「いつとは思ひ出(い)でねども、まさしくありし心地(ここち)のするは」
[訳] いつとは思い出せないけれど、確かにあったような気持ちのするのは。
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