学研全訳古語辞典 |
うつ・す 【移す】
活用{さ/し/す/す/せ/せ}
①
動かす。移動させる。置き変える。
出典源氏物語 桐壺
「もとよりさぶらひ給(たま)ふ更衣の曹司(ざうし)をほかにうつさせ給ひて」
[訳] 以前からお仕えしていらっしゃった更衣の部屋を(帝(みかど)は)ほかにお移しなさって。
②
流罪にする。
出典増鏡 新島守
「院の上、都のほかにうつし奉るべし」
[訳] 後鳥羽院を都の外にお流し申し上げるべきだ。
③
(心を)動かす。心変わりする。気をとられる。
出典源氏物語 蛍
「かかるすずろごとに心をうつし、はかられ給(たま)ひて」
[訳] このようなとりとめのないことに気持ちを動かし、だまされなさって。
④
しみ込ませる。
出典古今集 春上
「梅が香(か)を袖(そで)にうつしてとどめてば」
[訳] 梅の香りを袖にしみ込ませて残しておいたならば。
⑤
(時を)過ごす。経過させる。
出典徒然草 一二三
「無益(むやく)のことをなして時をうつすを」
[訳] 役に立たないことをして時を過ごすのを。
⑥
物の怪(け)をほかにのりうつらせる。
出典枕草子 松の木立高き所の
「もののけにいたう悩めば、うつすべき人とて」
[訳] (病人が)物の怪にたいそう苦しむので、(それを他へ)のりうつらせるのにふさわしい人として。
移すのページへのリンク |