学研全訳古語辞典 |
うつ・る 【移る】
活用{ら/り/る/る/れ/れ}
①
動く。移動する。転居する。
出典更級日記 かどで
「九月(ながつき)三日門出して、いまたちといふ所にうつる」
[訳] 九月三日に(上京に先だって)門出をして、いまたちという所へ移動する。
②
(色が)あせる。さめる。変色する。
出典古今集 春下
「花の色はうつりにけりないたづらにわが身(み)世(よ)にふるながめせし間(ま)に」
[訳] ⇒はなのいろは…。
③
時が過ぎる。時とともに変化する。
出典徒然草 一五五
「生・老・病・死のうつり来たること、またこれに過ぎたり」
[訳] 生まれること、年老いること、病むこと、死ぬことが時とともに変化し巡り来ることは、またこの自然界の変化以上に早いのである。
④
しみつく。染まる。
出典枕草子 宮にはじめてまゐりたるころ
「裳(も)・唐衣(からぎぬ)に白いものうつりて」
[訳] 裳や唐衣におしろいがしみついて。
⑤
変わる。変化する。
出典徒然草 八五
「この人は下愚(かぐ)の性、うつるべからず」
[訳] この人は非常に愚かな性格で、(賢く)変わることができない。
⑥
転任する。異動する。
出典大鏡 良房
「貞観(ぢやうぐわん)八年に、関白にうつり給(たま)ふ」
[訳] (藤原良房(ふじわらのよしふさ)は)貞観八年に、関白に転任しなさる。
⑦
(物の怪(け)が)のりうつる。
出典源氏物語 葵
「人にさらにうつらず」
[訳] (物の怪(け)などが)よりまし(=一時的に物の怪や霊をのりうつらせる子供や人形)に決してのりうつらないで。
⑧
(葉・花などが)散る。
出典新古今集 春下
「今日だにも庭を盛りとうつる花」
[訳] せめて今日だけでも、庭の上が花盛りであるかのように散る花よ。
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