学研全訳古語辞典 |
もし 【若し】
①
仮に。万一。もし。▽仮定表現に用いる。未然形に付く接続助詞「ば」と呼応することが多い。
出典方丈記
「もし心にかなはぬことあらば、やすくほかへ移さんがためなり」
[訳] もしも満足しないことがあったら、簡単に他の場所へ(住居を)移そうと思うためである。
②
ひょっとして。あるいは。▽疑問・推量の表現に用いる。疑問の係助詞「や」と呼応することが多い。
出典大鏡 花山
「もしさることやし給(たま)ふ」
[訳] ひょっとしてそのようなことをなさるかもしれない。
わか・し 【若し】
活用{(く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ}
①
若い。幼い。年少だ。年若い。
出典今昔物語集 二九・四二
「わかき女の死にて臥(ふ)したるあり」
[訳] 若い女で死んで横たわっている者がいる。
②
あどけない。子供っぽい。
出典源氏物語 若紫
「『少納言がもとに寝む』とのたまふ声、いとわかし」
[訳] 「少納言のところで寝よう」とおっしゃる声が、とてもあどけない。
③
技量や考え方が未熟だ。
出典源氏物語 紅葉賀
「おもしろう吹きすまし給(たま)へるに、かき合はせ、まだわかけれど、拍子たがはず、上手めきたり」
[訳] (笛を)趣深く一心にお吹きになると、(箏(そう)の琴を)それに合わせて弾き、まだ未熟だが、拍子を間違えず、名人のように見えた。
④
若々しい。活気がある。みずみずしい。
出典万葉集 一七四〇
「わかかりし膚(はだ)も皺(しわ)みぬ」
[訳] 若々しかった肌もしわだらけになってしまった。
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