学研全訳古語辞典 |
たま・ふ 【賜ふ・給ふ】
活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}
①
お与えになる。下さる。▽「与ふ」「授く」の尊敬語。
出典更級日記 夫の死
「『稲荷(いなり)よりたまふしるしの杉よ』とて、投げいでられしを」
[訳] 「稲荷から下さるしるしの杉だ」といって一枝の杉を投げ出され(た夢を見)たが。
②
〔命令形を用いて〕しなさい。▽人を促す意を表す。
出典徒然草 二三六
「いざたまへ、出雲(いづも)拝みに。かいもちひ召させん」
[訳] さあ、いらっしゃい、出雲神社の参拝に。ぼた餠(もち)をごちそうしよう。
活用{は/ひ/ふ/ふ/へ/へ}
〔動詞や助動詞「る」「らる」「す」「さす」「しむ」の連用形に付いて〕…てくださる。お…になる。お…なさる。▽尊敬の意を表す。
出典伊勢物語 二四
「『この戸開けたまへ』とたたきけれど」
[訳] 男は「この戸を開けてください」とたたいたが。
たま・ふ 【賜ふ・給ふ】
{語幹〈たま〉}いただく。ちょうだいする。▽「受く」「飲む」「食ふ」の謙譲語。
出典万葉集 三七六七
「魂は朝(あした)夕べにたまふれどあが胸痛し恋の繁きに」
[訳] あなたの真心は朝に夕べにいただくけれど私の胸は痛いのだ。恋が絶え間ないので。
活用{へ/へ/(ふ)/ふる/ふれ/○}
〔「思ふ」「見る」「聞く」などの連用形に付いて〕…させていただく。▽謙譲の意を表す。
出典源氏物語 若紫
「今はこの世のことを思ひたまへねば」
[訳] 今は現世のことは考えさせていただきませんので。
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