学研全訳古語辞典 |
うたた 【転】
①
〔多く「うたたあり」の形で〕
(ア)
いっそう嫌で。不快に。うとましく。
出典古今集 雑体
「花と見て折らむとすれば女郎花(をみなへし)うたたあるさまの名にこそありけれ」
[訳] ただの花と見て折ろうとしたら、おみなえしだった。(僧である自分にとって)うとましい感じの名であったなあ。
(イ)
ますますひどく。異常に。はなはだしく。
出典源氏物語 手習
「いと、うたたあるまで、世を恨み侍(はべ)るめれば」
[訳] 実に異常なほど世を恨んでいるようですので。
②
ますます。いよいよ。いっそう。
出典和漢朗詠集 秋晩
「砌(みぎり)に聴けば飛泉うたた声をます」
[訳] みぎり石に落ちる雨水の音を聴くと、いっそう音高く聞こえる。
うたて 【転】
①
ますますはなはだしく。いっそうひどく。
出典万葉集 二四六四
「見まくぞ欲しきうたてこのごろ」
[訳] (会えない妻に)会いたいと思うことだ。ますますはなはだしくこのごろは。
②
異様に。気味悪く。
出典枕草子 木の花は
「葉の広ごりたるさまぞ、うたてこちたけれど」
[訳] (桐(きり)は)葉が広がっているのが、異様におおげさだけれど。
③
面白くなく。不快に。いやに。
出典徒然草 三〇
「人の心はなほうたておぼゆれ」
[訳] 人の心というものはやはりいやに思われる。
⇒うたてし。
出典源氏物語 帚木
「あなうたて、この人のたをやかならましかば」
[訳] ああいやだ、この人が物やわらかであったならよいのに。
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