学研全訳古語辞典 |
おく 【奥】
①
物の内部に深く入った所。
出典千載集 雑中
「世の中よ道こそなけれ思ひ入(い)る山のおくにも鹿(しか)ぞ鳴くなる」
[訳] ⇒よのなかよ…。
②
奥の間。
出典大和物語 一七三
「やをらすべり入りて、この人をおくにも入れず」
[訳] 音もなくそっと中に入って、この人を奥の間にも入れない。
③
(書物・手紙などの)最後の部分。
出典古今集 哀傷
「書きて送りけるおくに詠みて書けりける」
[訳] 書いて送った(手紙の)最後に詠んで書いてあった(歌)。
④
「陸奥(みちのく)」の略。▽「道の奥」の意。
出典奥の細道 須賀川
「風流の初めやおくの田植(たうゑ)歌―芭蕉」
[訳] ⇒ふうりうの…。
⑤
遠い将来。未来。行く末。
出典万葉集 六五九
「あらかじめ人言(ひとごと)繁しかくしあらばしゑやわが背子(せこ)おくもいかにあらめ」
[訳] 前々からうわさが立っています。こんなことだったら、ままよ、あなた、行く末はどうなるのだろう。
⑥
心の奥。
出典源氏物語 紅梅
「心ばへありておく推し量らるるまみ額つきなり」
[訳] 才気があって心の奥深さが推察される目元や額のようすである。
奥の細道
分類書名
俳諧(はいかい)紀行。松尾芭蕉(ばしよう)作。元禄十五年(一七〇二)刊。一冊。〔内容〕元禄二年(一六八九)江戸を出て、門人曾良(そら)とともに松島・平泉・象潟(きさかた)など奥州を旅し、北陸を経て大垣に至る約百五十日の紀行文で、円熟した俳句や文章のなかに、自然と人生のとけあった奥深い芭蕉の詩境がうかがえる。
おく 【招く】
⇒をく
お・く 【置く】
活用{か/き/く/く/け/け}
(霜や露が)降りる。
出典徒然草 一九
「霜いと白うおける朝(あした)」
[訳] 霜がたいそう白く降りている朝。
活用{か/き/く/く/け/け}
①
(その位置に)置く。据える。設ける。
出典枕草子 清涼殿の丑寅のすみの
「古今の草子を御前(おまへ)におかせ給(たま)ひて」
[訳] (中宮は)『古今和歌集』の本をお手元にお置きなさって。
②
そのままにする。残しておく。
出典徒然草 二二四
「少しの地をもいたづらにおかんことは、益(やく)なき事なり」
[訳] 少しの土地もむだに残しておくようなことは、無益なことである。
③
除く。さしおく。
出典万葉集 八九二
「あれをおきて人はあらじと誇(ほこ)ろへど」
[訳] ⇒かぜまじり…。
④
間隔をおく。間隔をあける。隔てる。
出典万葉集 三七八五
「ほととぎす間(あひだ)しましおけ」
[訳] ほととぎすよ、しばらく間をおいてくれ。
⑤
〔「心おく」の形で〕心に隔てをおく。気兼ねする。
出典徒然草 三七
「朝夕隔てなく馴(な)れたる人の、ともある時、我に心おき」
[訳] 日常遠慮なく親しくしている人が、ちょっとした時、私に気兼ねして。
活用{か/き/く/く/け/け}
〔動詞の連用形、または連用形に助詞「て」の接続したものに付いて〕あらかじめ…する。…ておく。
出典徒然草 九六
「見知りておくべし」
[訳] あらかじめ見知っておくとよい。
お・く 【起く】
活用{き/き/く/くる/くれ/きよ}
①
目覚める。寝床から出る。
出典今昔物語集 二八・四二
「夫はいまだ臥(ふ)したりけるに、妻おきて食物(じきもつ)の事などせむとするに」
[訳] 夫はまだ寝ていたが、妻は目覚めて食事の準備をしようとすると。
②
起き上がる。立ち上がる。
出典和泉式部
「からうじておきて『人もなかりけり。…』とて、また寝ぬ」
[訳] (侍女から起こされた下男は)やっと起き上がって「だれもいないことよ。…」と言って、また寝てしまった。
③
寝ないでいる。
出典源氏物語 賢木
「いで給(たま)ふまではおきたらむと」
[訳] (中宮が)ご退出なさる時までは寝ないでいようと。
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